【高論卓説】柔道界にみる女性活躍の鍵 信頼できる男性のサポート不可欠 (1/2ページ)

 大学でキャリアデザインの授業を担当しているが、20歳前後の学生が将来のキャリアを真剣に考えていることに、いつも驚かされる。筆者が自分のキャリアを考え始めたのは、36歳のときだ。自分がどんな職業に向いているのか、何が適性なのか、自分で自身の才能と能力を見極めることほど難しいものはない。

 例えば、日本のスポーツ界では現役時代にプレーヤーとして実績を残した選手が監督やコーチになるケースが多いが、海外ではプレーヤーとしての能力と指導者としての才能は別物と考えられている。イタリアのサッカーリーグ、セリエAで監督を歴任したサッリ監督は元銀行員だ。

 女性として初めて男子柔道のブラジル代表監督に就任し、世界の話題をさらった藤井裕子さんも元柔道選手だった。とはいえ、オリンピックに出場したわけでも全日本で優勝したわけでもない。

 藤井さんは、英国留学中に同国の柔道代表女子チームのコーチをするようになり、ロンドン五輪ではジェマ・ギボンズ選手の銀メダル獲得に貢献したことから、指導者としての才能が開花した。

 その後、リオ五輪を控えたブラジルチームから女子柔道のコーチとして招聘(しょうへい)された。リオ五輪ではハファエラ・シルバ選手を指導し地元五輪での金メダル獲得に貢献、指導者としてのユウコ・フジイの名は世界に知られるようになった。そしてブラジル柔道連盟は藤井さんを男子柔道の代表監督に抜擢(ばってき)する英断を下す。

 日本の柔道連盟から派遣されたわけでもなく、スポンサーがついているわけでもなく、藤井監督は自力だけでキャリアを構築し実績を残してきた。だが、藤井監督の力量をまず認めたのは海外の柔道界だ。

 この点、サッカーの日本代表監督だったフランス人のトルシエ氏やイタリア人のザッケローニ氏ら、指導者を生業とし母国以外で活躍するプロの監督と生き方は似ている。

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