酔鯨酒造、吟醸酒生産に特化 市場開拓へ土佐に製造拠点

吟醸酒に特化した新たな製造拠点「土佐蔵」=高知県土佐市
吟醸酒に特化した新たな製造拠点「土佐蔵」=高知県土佐市【拡大】

 日本酒メーカーの酔鯨酒造(高知市)が、日本酒市場の深耕に乗り出した。9月には高知県土佐市内に新たな製造拠点となる「土佐蔵」を新設。同蔵を近年需要が拡大している吟醸酒の生産に特化させることで、さらなる市場開拓に向けた体制を整えた。

 あわせて同蔵を日本酒文化の啓発拠点と位置付け、蔵内の見学やギャラリーでの試飲体験、各種イベントも企画。周辺域の観光需要の掘り起しにも挑戦する考え。

 新拠点の開所にあたる「蔵開き」に際し、同社の大倉広邦社長は「日本酒を体感できる場所にしたい」と期待を寄せた。

 新蔵は延べ床面積が約1190平方メートル、生産能力は年間約120キロリットル。少量仕込みと徹底した温度管理が可能な設備を導入した。

 同社としては初めてとなる精米機も導入。吟醸、大吟醸酒を精米から醸造、瓶詰まで一貫生産できる体制を整えた。今回の新蔵関連の総工費は約10億円。

 同社は1969年創業。これまでは本社のある高知市長浜の製造拠点「長浜蔵」で製品を製造してきたが、設備の老朽化や南海トラフ地震への対策などもあり、新拠点の整備に着手。同時に、需要が拡大する吟醸酒など高級品へのシフトを強めることにした。

 「長浜蔵」での製造も当面続けるが、5年後をめどに本社も含め「土佐蔵」の隣接地に全面移転する方針という。

 日本酒は「国酒」でありながら国内で苦戦が続いている。1998年には110万キロリットル強だった国内出荷量も、2015年には55万キロリットルと半減。酒類全体に占めるシェアも6%程度という。

 ただ、吟醸酒などの高級酒に限ると国内でも増加傾向にあるほか、17年の財務省貿易統計によると輸出は2万3000キロリットルで前年比19%増。8年連続で過去最高を更新するなど好調に推移している。

 同社も海外で日本食とともに日本酒需要が拡大していることに着目。海外戦略も強化していく考えだ。