【経済インサイド】経営者の創業ストーリーを舞台化、企業の広報宣伝に新手法 (1/3ページ)

舞台装置を使わずにオフィスで働くようすを表現する劇団SPINNINRONINの公演=東京都千代田区
舞台装置を使わずにオフィスで働くようすを表現する劇団SPINNINRONINの公演=東京都千代田区【拡大】

  • モデルとなったイオレの吉田直人社長(左)と企画したムーブメントプロデューサーの波房克典氏=東京都千代田区
  • 創業Xを舞台化した劇団「SPINNINRONIN」の加世田剛、榎本鉄平の両代表
  • 昼夜2回の公演に計331人の観客が訪れた=東京都千代田区
  • 普段とは異な男性会社員の姿が目に付いた=東京都千代田区

 テレビCMやキャンペーン、プロスポーツの冠スポンサーといった、認知度を高めるための広報宣伝活動に各企業が知恵を絞っている。新興企業の若い経営者の場合、自らメディアに出演して派手な話題を振りまくこともある。こうした多様な企業広報のひとつに、プロの劇団が創業ストーリーを舞台化して再現する新たな手法が加わった。

 「創業X」は、起業家の創業から現在に至るストーリーを舞台で表現している。第1弾として、昨年12月に東証マザーズ市場に新規上場した、学校やスポーツ団体・グループの連絡網サービスを提供するイオレの吉田直人社長の半生を「ガンと破産、そして復活。オーレ!でつなぐ670万人の連絡網~」として上演した。

 吉田社長は、広告・PR、人材派遣、ゲームソフト制作など複数の企業を立ち上げた連続起業家。しかし32歳のときに喉頭がんを煩う。死を覚悟してゲーム開発のため多大な借り入れとオーバーワークを重ね、命を削るようにしてようやく完成させる。ゲームはヒットし、治療によって病気も克服したが、平成9年の金融危機で銀行から“貸しはがし”に遭い、会社は倒産し自己破産に追い込まれてしまう。無念を酒で紛らわせた時期もあったが、以前の従業員や弁護士、債権者など、周囲の支えを受けながら不屈の精神力と精進で再起する。

 企画したのは、官民連携の「熱中症予防声かけプロジェクト」、丼で地域経済活性化を試みる「全国丼連盟」などをプロデュースしたムーブメントプロデューサーの波房克典さん。テレビドラマ「下町ロケット」がヒットしたことから、「創業者の起業にかける覚悟と信念、地をはう努力をライブにすれば、興味深く分かりやすく、顧客や従業員のほか、社会に広く伝えられる魅力的な企業広報になるのではないか」と舞台化を思いつく。すぐに友人の吉田社長に話を持ちかけた。吉田社長は「自伝も出版していないので『えーっ、僕でいいの』と思ったが、大変光栄なので『いいよ』と応えた」と振り返る。

「おもしろそうだからやろう」だけじゃない