空前の低金利や先行きが不透明な経済情勢を受けて、生命保険各社が運用先を株式や債券といった「伝統的な資産」以外の分野にも積極的に振り向けている。投資をより分散することで資産の価格変動リスクを低減させたり、少しでも有利な運用先を求めているためだ。なかには社会貢献を掲げて新興企業に投資する生保も出てきた。リスクヘッジのためにも、こうした流れはますます強まると予想される。
機関投資家の使命
第一生命保険は8月、慶応大先端生命科学研究所(山形県鶴岡市)と連携協定を結び、心臓疾患の治療を研究するベンチャー、メトセラ(同)に、1億円を出資した。リターンに加え、同社が持つ技術を保険業での新サービスにつなげる狙いがある。同時に地域活性化も目指す。
社会貢献と収益の両取りを目指す「インパクト投資」と呼ばれる手法だ。医療費削減や環境問題など、社会的な課題を解決できるかもしれない企業を専門部隊らが選定し、投資を行う。昨年度からインパクト投資に取り組み、これまで未上場企業6社に延べ20億円超を出資した。
社会に資する技術を持つ会社は今後も成長していく可能性が高いことから、将来的には大きな収益も期待できる。同社は「チャレンジしている企業に長期資金を供給するのは、機関投資家としての生保会社の使命だ」としており、今後もインパクト投資を拡大していく方針だ。
農業、インフラに投資
株など「伝統的」な資産と違い、相場の動きとの相関性が低い資産を増やすことで、分散投資の効果を高めようとする生保もある。日本生命は平成30年度下期の運用計画の説明会で、不動産などの資産の残高拡大を加速させると発表。今年度は農地投資ファンドに約100億円を投資した。住友生命保険も道路や鉄道などのインフラ事業への投資を本格化させている。