清水建設 ダイオキシン土壌処理、ベトナムで実証へ

日本国内で稼働していた頃の清水建設のダイオキシン汚染土壌の処理プラント。来年からベトナムで実証のため稼働に入る(同社提供)
日本国内で稼働していた頃の清水建設のダイオキシン汚染土壌の処理プラント。来年からベトナムで実証のため稼働に入る(同社提供)【拡大】

  • ベトナムのダイオキシン汚染土壌の洗浄実験。洗浄液中のダイオキシンを泡に付着させて効率的に回収する(同社提供)

 ■環境負荷低い浄化方式を提案

 清水建設がベトナムに土壌洗浄プラントを建設して実証実験に取り組む。これまで国内などで培ってきた技術をもとに、液体を使った泡洗浄と高温での熱分解を組み合わせる独自の方法により、低コストで環境負荷の低い浄化方式を提案する考えだ。土壌汚染に苦しむベトナムに日本の技術が挑む。

枯れ葉剤由来の汚染

 実証プラントはホーチミン市近郊のビエンホア空港に建設され、2019年1月には実証実験を始める。汚染物質はベトナム戦争時に米軍が散布した枯れ葉剤由来のダイオキシンで、ベトナムとしては経済発展のためにも土壌を洗浄して健康な国土を取り戻したいところ。

 同国にはダイオキシン濃度の高いホットスポットが28カ所あるが、ビエンホアには処理対象の土壌が40万立方メートル(重量換算で85万トン)あると推計される。

 既に米企業がビエンホアの4分の1程度を別の場所で10年間かけて除去しているが、ベトナム国防省は土壌汚染処理が長期化してコストがかさんでいることに加えて、排煙や二酸化炭素(CO2)の排出などによる環境負荷の高さも悩みの種だ。

 清水建設が進める今回のプラントでは、1時間当たり40トンの汚染土壌を扱う。液体で汚染物質を洗い流す“泡洗浄処理”で土壌に含まれるダイオキシンの9割が除去でき、残る1割は高温で熱分解する焼却処理で対応する。

 これまで土壌から汚染物質を取り除くには、液体による洗浄処理か焼却処理のいずれかが一般的だった。ただ、焼却処理では焼却炉や燃料が必要となるほか、環境負荷にも気を配る必要もあった。一方、洗浄処理では土壌から液体へと移動した汚染物質を効率的に確保する技術が必要だ。

 ビエンホアでも全量を熱分解処理することになれば費用は2倍程度を見込まねばならず、CO2排出量なども増える。また、処理期間も8~10年かかるが、大半を洗浄処理する清水建設方式ならば6~8年と期間短縮も見込める。

独自配合の洗浄液開発

 清水建設が土壌浄化事業に取り組み始めたのは02年。企業の工場跡地の再開発が活発化し、重金属など有害物質による土壌の汚染問題が顕著になった頃で、オランダから中古の土壌洗浄プラントを購入して事業化したのが始まり。

 土壌をふるいに掛けて粘土、砂と細かい砂、礫に分けた後、洗浄処理を行う。「汚染物質は粒子の大きさが小さいものにくっつく傾向があるため、粘土は焼却処理し、砂などを洗浄するプラントだった」とエンジニアリング事業本部の平沢卓也・土壌環境事業部事業部長は話す。

 06年に農薬による汚染土壌を請け負ったが、除去効率が悪かった。土壌をふるい分けしても礫や砂に汚染された細粒が付着してしまい、単なる洗浄では農薬が残留してしまうのが原因だった。高濃度汚染された細粒を除去するため、玄米の表面を削って糠(ぬか)と白米にするように土粒の削る方法もあるが、汚染物質を含んだ残渣(ざんさ)が増えてしまい処理費用がかさむ。

 このため、清水建設では汚染物質が土壌にどのように滞留(付着)しているのか、汚染物質の振る舞いを研究した結果、洗浄液に加える複数の薬剤に関して独自の配合比率を見いだした。薬剤の力で引き剥がされた汚染物質を効率的に回収するため、洗浄液を泡立てて、汚染物質を泡に付着させて泡を取り除く。

 食器洗いや服の洗濯の際に起きる現象を、土壌汚染の洗浄処理に持ち込んだのだ。土壌洗浄後に泡を取り除いた液体は環境基準値以下となり、処理コストも軽くなったという。(日野稚子)