地方塾、AI駆使で生き残り 全国130社超による新連合発足

東京都内で開かれた学習塾の新連合「教育アライアンスネットワーク」の設立記念会。右奥はあいさつする下屋俊裕代表理事=18日午後
東京都内で開かれた学習塾の新連合「教育アライアンスネットワーク」の設立記念会。右奥はあいさつする下屋俊裕代表理事=18日午後【拡大】

  • 学習産業の主要団体

 「これからはITを活用した教育システムが必要だ。地方の塾は開発に限界があり、大手の力を借りることにした」

 鹿児島市で小学生から高校生向けの進学塾「MUGEN(ムゲン)」を経営している小牧聖代表は、教育の変化に単独で対応する限界を感じ、全国の塾が合従連衡を選んだ事情を説明する。

 学研ホールディングスと市進ホールディングス(千葉県市川市)を中心とした全国の学習塾など130社超による新連合が今月発足した。新連合の名称は「教育アライアンスネットワーク」で、進学会(札幌市)や第一ゼミナール(大阪市)など各地の有名塾が参加。合計の売上高は1170億円で学習産業ではベネッセホールディングスに次ぐ国内2位の規模になる。生徒数は46万人。少子化のほか大学入試改革などの変化に対応し、勝ち残りを狙う。全国の塾が大同団結する連合の発足で教育業界の再編が一段と加速しそうだ。

 同塾は、詰め込み型ではなく、生徒が問題を理解して文章で答える過程を重視してきた。解答に行き詰まると講師が一緒に考え、自力で考える力を伸ばす方法で生徒数を増やしてきた。

 だが、高齢化による現役世代の減少は、生徒を指導する講師の人手不足として重くのしかかる。この塾も「講師の確保に不安があり、新たに教室を開きたくても控えている」(小牧代表)という課題に直面している。

 学習産業を取り巻く環境は厳しい。2016年時点で1578万人いる0~14歳の人口は、25年には1407万人に減り、半世紀後の65年には898万人まで減少するとの推計もある。

 中小企業を業種別に見ると、学習産業は労働生産性が低いと指摘されてきた。新たな教育改革に対応し、人手不足を補う面からも人工知能(AI)を駆使した教育システムの導入は欠かせず、小規模の塾は生き残りをかけた取捨選択を迫られている。

 全国ネットワークを構築することでITに対応したシステムやコストを抑えたサービスを導入でき、個性が発揮できる指導が可能になる。小牧代表は「どの塾にも独自の良さがある。省力化によって地域に密着した学習を提供することが求められている」と話す。