食品ロス削減 広がる工夫 家庭で保温調理、企業は賞味期限見直し

スープジャー(奥)に注がれる「うま煮」=10月、東京都渋谷区
スープジャー(奥)に注がれる「うま煮」=10月、東京都渋谷区【拡大】

 まだ食べられるのに食材が捨てられる「食品ロス」。その削減に向けた工夫が広がっている。家庭向けでは、スープジャーで食材を無駄にしない調理法が公開され、企業では賞味期限の表示見直しによる食品廃棄を減らす対策が進んでいる。

無駄なく

 10月末、「ベターホームのお料理教室」(東京都渋谷区)で、料理研究家の野上優佳子さんが「白菜と豚肉の春雨うま煮」を調理し、サーモスのスープジャーに出来たての料理を注いだ。

 スープジャーは、小さな密閉構造の容器で保温しながら具材に熱を通す「保温調理」ができる。

 じわじわと熱が通り、野菜は皮をむかなくても柔らかくなるので捨てずに食べられる余地が増える。調理時間は短く、温かい料理が楽しめる。

 「余る食材はこんなに少ないんです」。野上さんが残った野菜ごみを見せると手のひらに収まり、参加者からは驚きの声が上がった。

 60代の女性は「工夫すれば無駄を出さず、社会のためにもなる。早速やってみたい」と笑った。

レシピ

 食品ロスが起きるのは、売れ残りや食べ残しなど、流通の過程だけではない。啓発団体「フードサルベージ」の平井巧代表理事は「冷蔵庫にある食材を事前にチェックして必要な分だけ買い、食材を上手に使い切るなど、家庭でもできることはある」と指摘する。

 サーモスが9月に発売したスープジャーの「JBU-300」(0.3リットル)は、実勢価格2680円。同社はホームページで、大根やさつま揚げをナンプラーで味付けした「エスニックおでん」や「和風ポトフ」などのレシピを公開している。

「年月」表示

 食品メーカーが賞味期限表示を見直すなど、企業の対策も進んでいる。味の素は昨年2月から約1年半をかけて、賞味期間が1年以上あるカップスープなど176品目について、賞味期間を延長するとともに、賞味期限の表示を「年月日」から「年月」に変更した。表示された月の末日まで安心して食べられることを保証することで、期限が近いと早めに店頭から商品を引き揚げる動きが減り、食品廃棄の削減につながる。

 企業にとっても、店舗や倉庫での管理コストが減り、保管スペースも小さくできる。納品期限などの見直しが必要なため、国はメーカーや小売業界に積極的に取り組むよう求めている。

【用語解説】食品ロス

 年間で約621万トンが廃棄され、安易に食べ物を無駄にしない対策が必要になっている。