次世代自動車産業でも最大の武器になる…テスラになくトヨタにあるものとは (5/6ページ)

CES2018で自動運転機能を備えた商用電気自動車(EV)のコンセプト車「eパレット・コンセプト」を披露するトヨタ自動車の豊田章男社長(写真=時事通信フォト)
CES2018で自動運転機能を備えた商用電気自動車(EV)のコンセプト車「eパレット・コンセプト」を披露するトヨタ自動車の豊田章男社長(写真=時事通信フォト)【拡大】

  • 田中道昭『2022年の次世代自動車産業異業種戦争の攻防と日本の活路』(PHPビジネス新書)

 トヨタのこうしたオペレーションシステムは「世界最高」と評価されています。だからこそ、世界中でトヨタの生産方式が研究されているのです。いまでは、「カンバン」をはじめとするアンドン、ポカヨケ、ゲンバといったトヨタ式の日本語が、海外でもそのまま用いられるようになっています。

 カンバン方式とは「経営モデル」そのもの

 しかし、学んだところでその神髄までは、簡単にまねできるものではないのです。なぜなら、「カンバン方式」というのは、単なる在庫調整の手段ではなく、単なる生産方式でもありません。また単なる製販一体方式でも、製造業で言われている開発・製造・販売の一体方式でもありません。むしろ、長年にわたって築き上げてきた「経営モデル」そのものであると見るべきです。

 裏を返せば、メーカーにおいては生産管理システムが経営システムに深く結びついている、とも言えます。メーカーでは、製造現場で求められてきた生産管理の手法を、必然的に全社レベルでの経営モデルとして導入しています。生産管理が、経営における各主要機能と深く結びついているためです。ある生産管理システムを本格的に稼働させていくには、全社レベルでの経営モデルとしての導入が不可欠。ならば、次世代自動車産業においても、ふさわしい生産管理の手法を経営レベルまで浸透させなければなりません。

 スピードを見れば、その会社の成長力が見える

 この点において、トヨタは他社に大きく先行していると言えるでしょう。次世代自動車産業においても、トヨタがこれまで蓄積してきた知見に、他社がキャッチアップするのは、容易なことではないのです。

 「スピード、すなわち同期化を見れば、その会社の業績や成長力が見える」

 これは経営コンサルタントとして私が企業を最初に見るときの重要な視点の一つです。スピード経営がより重要な時代が到来していますが、特に開発・製造・販売での三位一体、関連部門間における経営の連鎖、高頻度でのPDCAの徹底などが必要となる製造業においては、その会社がどれだけのスピードで経営サイクルを回しているのかに全てが凝縮されているのです。

スピードの大きな源泉となっている「同期化」