「不満の本質を見極めよ」 イオンを創った女・小嶋千鶴子氏が残した6つの名言 (3/4ページ)


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  • 東海友和『イオンを創った女評伝小嶋千鶴子』(プレジデント社)

 「オカダヤは職場の学校、1年より2年は勝り、2年より3年は優れ、花のかんばせ……」

 というものであった。入社が1年違うと能力、責任感、仕事の遂行能力に歴然とした差が生まれたのである。

 「情報の共有、目的の共有、結果の共有」

 小嶋は日常的に、情報のあり方、コミュニケーションのあり方、会議の仕方、傾聴方法、事務の流れなどについて、口酸っぱく言ってきた。

 上司が部下に腹を割って情報を開示し、現状を訴え、協力を求めたとしたら、部下は「これほど信頼してくれている」と感激をするものである。反対に情報を自分だけに取り込み、開示しない上司がいたら、どう動いていいかわからなくなり、その果ては「勝手にどうぞ」ということになる。

 「人本主義」を唱える一橋大学名誉教授の伊丹弘之教授は、経営には人・モノ・金に加えて「感情」があると喝破している。部下の意見、やる気を出させるための縦横上下の豊富なコミュニケーションほど効果的なものはなく、置かれている共通の目標に向かってのPDCA活動は良い結果を生む。万が一、不満足な結果であっても、その結果について共有することにより、より強い団結力や組織としての捲土重来の意識がうまれるのである。

 小嶋は全国の人事担当者会議を月に一度開催し、本社の人事スタッフも参加させた。そこでは小嶋からの指示や訓戒訓示はなく、各員からの発表に対して短いコメントをするにとどめた。その場ではできるだけ自分の情報を開示し、同時に地域からの人事情報をつぶさに得、さらに全員に共有させたのである。

 「不満の本質を見極めよ」

 不満は時としてさまざまなカタチで表面化するものである。すねる・反発・拒否・怠惰・反抗・抗議・非協力・無関心等として噴出するが、カタチは問題ではなく、その原因がなにかである。

 上司の一見ささいと思われることがらで、部下が大変傷つくことがある。たとえば、朝のあいさつの返事がなかった、名前を呼び捨てにされた、反対に呼び捨てにしてほしいといった不満だ。会議に呼び出しがなかった、OJTや教育の機会がない、改善提案をしても返事や取り上げがない、もっと重要な仕事、責任ある仕事を任されたいなど、比較的高次の不満もある。後者は良き不満であり、成長のあかしでもある。

「正義」という皮