病人の発生を事前予測も 広がるAI活用、国も後押し

AIによる病人やけが人の発生予測結果を示す画面=名古屋市中区
AIによる病人やけが人の発生予測結果を示す画面=名古屋市中区【拡大】

  • AIによる病人やけが人の発生予測結果を示すタブレット端末を手にする救急隊員
  • AIで制御する5本指のマッサージロボットの試作機=愛知県豊橋市の豊橋技術科学大

 自動運転をはじめ、さまざまな産業分野で人工知能(AI)の活用が広がっている。政府の総合科学技術・イノベーション会議(議長・安倍晋三首相)は昨年、人工知能の分野で世界トップレベルの人材を年100人程度育成することを目指し、教育制度を改革することなどを柱としたAI戦略の骨子を策定。世界で開発競争が激しくなる中、国を挙げてAIに力を入れる方針を打ち出しており、今後、暮らしのあらゆる場面でAIが活躍していきそうだ。

救急出動で実証実験

 2020年の名古屋市。病人やけが人を助ける救急隊を指揮するのはAIだ。

 総務省消防庁と名古屋市は、過去の救急出動のビッグデータに気温などの気象条件を加味し、AIが病人やけが人の発生を予測、あらかじめ救急隊を最適な場所に配置する実証実験に取り組んでいる。救急車の出動から病院搬送までの時間短縮が狙いで、東京消防庁も同様の研究に着手している。

 実験には、市が過去9年分の救急出動の時間や場所といったデータを提供。データや人口分布を基に、AIが天気や気温、曜日など当日の状況を分析し、傷病者が多く出そうなエリアや時間帯をはじき出す。

 携帯電話の位置情報で人が多く集まっている場所を割り出すことも検討している。実用段階ではAIの需要予測に基づき、消防署などで待機する救急隊の数を調整する。出動要請が少なそうな地区から多そうな地区にあらかじめ移動させる。市消防局は「人間の経験則では導き出せない正確な予測を期待している」と話した。

指圧師の施術再現

 一方、人手不足を踏まえて、豊橋技術科学大(愛知県豊橋市)と健康機器メーカーのリッコー(東京)は、AIで制御する5本指のマッサージロボットを共同開発する。押す強さや位置をAIが学習し、指圧師の施術を再現。指圧師の負担軽減や人手不足の解消が期待できる。

 5本指はつかむための4指と、押すことに特化した母指で構成。ベッド脇のレールをスライドするバーの先端に取り付けられ、カメラで施術する位置を特定する。

 回数を重ねると、AIによって力の加減を変えたり、心拍や表情、音声から体の状態を読み取ったりするなど、利用者の状況に合わせた動きができるようになるという。

 リッコーの開発責任者は21年の実用化を目指すといい「人の手か機械か分からないもみ心地を再現し、人に寄り添うマッサージ機を作りたい」と話した。

 このほか、証券取引等監視委員会はインサイダー取引などの株式相場での不正や粉飾決算を見抜くため、AIなどを使った市場監視システムの導入を検討中。日本ハムとNTTデータなどは、AIやIoT(モノのインターネット)の技術を使って複数の豚舎を少ない人手で効率的に管理する「スマート養豚プロジェクト」に取り組んでいる。