【プロジェクト最前線】東テク、省エネの切り札「ESCO」で高まる存在感 (2/2ページ)

打ち合わせをする岡野毅エネルギー企画部長(左)とエネルギーソリューション部の須山菜穂子課長=東京・日本橋本町の東テク本社
打ち合わせをする岡野毅エネルギー企画部長(左)とエネルギーソリューション部の須山菜穂子課長=東京・日本橋本町の東テク本社【拡大】

  • 管理一体型ESCO事業の舞台の一つになった福井大学松岡キャンパス
  • ショールームとしても活躍する東テクグループ本社ビル

 ◆管理一体型を初受注

 福井大で手掛けた国立大初の全キャンパス対象の管理一体型ESCO事業は、その真価が問われる試金石でもあった。標準型のESCO事業は契約範囲の設備だけを対象にするが、管理一体型は既存設備を含む全ての機器、設備や運転、保守なども包括的に対象にする大掛かりなものだ。

 福井大には5つの主要キャンパスがあるが、最大の難所は大学全体の約75%のエネルギー消費を占める松岡キャンパス(福井県吉田郡永平寺町)。他のキャンパスと異なり、365日24時間稼働する付属病院を抱える。「このキャンパスの攻略が勝負を分ける」(岡野部長)と判断、省エネにつながるあらゆる手を打っていった。大きかったのが中央熱源システムの見直しだ。A重油を中心に冷水、温水、給湯をそれぞれ供給していたが、排熱や地熱など未利用エネルギーを利用するとともに、冷水、温水、給湯の同時供給も実現した。

 さらに既存設備の蒸気漏れを見つけたり、教室の冷暖房の運転状況をチェックしたり、既存設備の運用改善を含めた大小さまざまな省エネを実施。さらに大学の教員や学生の省エネ意識も高まっていったという。

 こうした取り組みを全キャンパスで展開した結果、サービス開始2年目に当たる2016年度の削減量は原油換算で2016キロリットル(省エネ率17.4%)に達した。このうち、運用改善の削減量は206キロリットルと全体の10.2%を占めるという。

 福井大のESCO事業は「サスティナブルキャンパス賞2016」の建築設備部門も受賞。東テクはその後もESCO事業を17年に富山大、18年に九州歯科大から相次いで受注し、ESCO事業者としての地歩を確実に築きつつある。

 岡野部長は「ESCOの勢いを他のエネルギーソリューション事業にも波及させていき、エネルギーソリューションを早く空調、計装に並ぶ第3の柱にしたい」と意気込んでいる。

 ≪焦点≫

 ■本社は最先端技術結集のショールーム

 東テクグループの最先端テクノロジーを結集した新本社社屋が2016年12月に東京・日本橋本町に完成した。空調機器の販売や計装工事をメイン事業にする企業らしく、快適性と省エネの両立を図った設計を採用。本社全体をショールームとして最大限活用している。

 人の在/不在を的確に検知する「T-ZoneSaver」を全館に採用し、人数に応じた照明、空調、換気を自動制御。一部フロアには、25平方メートル単位で微調整ができる最新式のセル式空調システムも取り入れた。もちろん設備やフロアごとにきめ細かくエネルギー消費量が分かるシステムを構築。社員がまず試すことで、改良点などを見つけ、顧客に自信をもって勧めるサイクルも確立している。

 以前の本社が築40年以上のビルに入居していたこともあり、新しい本社ビルは社員からも好評で「オフィスが明るくなった」「会議室やトイレが増えて快適」「空気がきれい」(女子社員)といった声が上がる。椅子、机、備品なども移転に伴い、全て一新した。新本社ビル完成後、家族を会社に招く社内見学会も年1回開催している。総務部の堀之内智明部門長は「日本橋という風情のある地域との関わりも重視している」と語る。本社ビルの足元で行われる伝統行事の「べったら市」にはライトアップや敷地提供で協力するなど、地域の一員としての役割も果たしている。

 ■東テク

 【本社】東京都中央区日本橋本町3-11-11

 【設立】1955年7月

 【資本金】18億5700万円

 【従業員数】1598人(連結、2018年3月31日)

 【売上高】926億4600万円(同、18年3月期)

 【事業内容】空調機器、計装機器の販売・工事、エネルギーソリューションなど