【2019 成長への展望】みずほFG社長・坂井辰史さん(59)


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 ■M&Aよりフィンテックへの種まき

 --今年の抱負を

 「いのしし年なので年男だ。猪突(ちょとつ)猛進というと少し危なっかしい感じがあるが、力強く歩を進めるという年にしたい。4月から新しい中期経営計画に入るし、その中で構造改革も次期勘定系システムへの移行が7月に完了して加速するので、非常に大事な年になる。マクロ経済の不透明感や変調に対してしっかりとした備えをしておく必要がある」

 --次期中期計画では、構造改革で生じた経営資源をどの分野に重点配分する方向なのか

 「今後どんな経営環境になっても耐えうるようなストレス耐性のある財務基盤をつくらないといけないので、十分な自己資本を持つことが必要だ。デジタル分野向けの出資の話もいろいろあるので、投資も必要になる。さらに株主還元を中長期目線でいかに高めていくか。これら3つのバランスだ。一気に構造改革を進め、力強い基盤をつくる」

 --重点地域に据えるアジアでのM&A(企業の合併・買収)を検討するか

 「現時点ではない。企業価値評価が割高なので、買ったら減損の嵐になるからだ。今は財務体力をしっかりと蓄積して、われわれが次の調整局面をきちんと乗り切れると確信できたら考える。それよりも(ITと金融が融合した)フィンテックの事業者に小口でも出資するなど、同分野で種まきをしておくことが優先だ」

 --超低金利が続く中、預金や貸し出し以外のサービスを通じて継続的に利益を得る「リカーリング」ビジネスの強化を打ち出す金融機関が増えてきた

 「安定収益源をどこに求めるかが課題だ。例えば、富裕層に運用関連の商品を売るウェルスマネジメントでは販売手数料ではなく、資産管理をする中で残高に応じた報酬をいただくことにシフトしていく。また、企業の貿易取引に必要な海外送金や為替取引などの決裁業務をサポートして手数料を得るトランザクションバンキングも安定的な収益源になる。この分野はとくにアジアがこれから伸びると思っている」

 --LINEと組み、新銀行を開業する

 「ITプラットフォーマーとして日本最大の7800万人の利用者を抱えており、ともにサービスを提供すれば、みずほにとって顧客基盤の外縁を増やしていける。既存業務と多少の重複はあるが、手の届かないところにしっかりとリーチを伸ばしていく。今後、個人データを利活用するデータビジネスも非常に重要であり、LINEの技術や顧客基盤は非常に魅力的だ」

【プロフィル】坂井辰史

 さかい・たつふみ 東大法卒。1984年日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。執行役員、常務執行役員、みずほ証券社長などを経て、2018年から現職。石川県出身。