【2019 成長への展望】住友化学社長・十倉雅和さん(68)


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 ■デジタル変革によって技術革新加速

 --昨年を振り返って

 「世界経済は堅調だったが、大きな転換点を迎えたという印象だ。貿易自由化を目指す多国間主義の崩壊がみられた。これは始まりで、こういう状態がしばらく続くのではないか」

 --サウジアラビアの内政問題、日韓関係悪化など地域的にも揺れている

 「サウジとは石油化学の合弁事業『ペトロ・ラービグ』で約15年、韓国とも情報電子化学で約20年の付き合いがあり、良好な信頼関係を築いている。もちろんカントリーリスクはあるが、それを認識し、ヘッジしながらやっていくということだと思う」

 --企業はそんな時代にどう向き合うべきか

 「経営者は前向きにならないといけない。デジタルトランスフォーメーション(変革)に伴い技術革新が起こり、新しいソリューションを提供する動きが出始めた一方、地球規模の課題が意識されている。こうした変化は企業にとってチャンス。勤勉な日本人は、そういう時代の主役になるポテンシャルを持っている」

 --石化事業は良好な環境が続く

 「ただ、既に需要のピークは超えた。原油価格はシェールオイル・ガスという代替供給源がうまく上値を抑えているので、急激な上げ下げはないと思う。一方、シェール由来製品はそろそろ(アジアに)流入するといわれているし、現にもう一部は来ていると思う。需給は明らかに緩んできている。2016年、17年の非常にいい時代は過ぎた」

 --18年度で3カ年中期経営計画が終了する

 「数値目標はほぼ達成し、内容的にもまずまずの進捗(しんちょく)をみせた。一つ前の中計は財務改善に重きを置いたが、現行計画はポートフォリオ(事業構造)の高度化を掲げ、(収益性の高い)機能化学品の育成に力を注いだ。6900億円の投資を計画し、その半分を初年度に実行したが、手応えを感じている。石化事業の売上高は、16年、17年の好調だったときでも全体に占める割合は約3分の1しかなくなっている」

 --今年の抱負は

 「未来に向けたスローガンとして『チェンジ&イノベーション(変化と革新)』を掲げ、技術を基盤に新しい価値を生むことを目指してきた。デジタル変革の波が本格到来する中、その精神を維持したい。機能化学品が伸び、石化もラービグが力をつけてきたので、業績面は心配していないが、その次をにらんで技術革新をさらに加速したい。そのためには生産性や研究開発力をもっと高める必要がある」

【プロフィル】十倉雅和

 とくら・まさかず 東大経卒。1974年住友化学工業(現住友化学)入社。執行役員、常務、専務などを経て2011年4月から現職。兵庫県出身。