郵船社長、日本向けLNG燃料船検討 荷主の環境意識受け

インタビューに応える日本郵船の内藤忠顕社長(ブルームバーグ)
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 日本郵船は環境規制への対応として、日本の荷主向けに液化天然ガス(LNG)を燃料とする船舶を建造する。従来は欧州向けLNG燃料船を保有していたが、日本企業の間でも環境意識が高まっており、同社としては初の国内での供用に向け検討に入った。

 郵船の内藤忠顕社長はインタビューで、環境問題への取り組みが企業の評価を左右する中、日本でも荷主企業からLNG燃料船を求める動きが広がっていると指摘。「既に日本の大手自動車メーカーをはじめ、長期契約の複数業種の顧客からLNG燃料船を使用したいとの要望を受けている」と述べ、顧客企業との間で建造の共同研究を進めていると語った。

 消費者の環境意識が高い欧州では、自動車メーカーなどがLNG燃料船を自社向けの輸送に指定する動きが先行。郵船グループは世界初のLNG燃料自動車運搬船2隻を2016年から欧州海域に就航させていたが、日本向けのLNG燃料船は保有していなかった。

 国際海事機関(IMO)は船舶が排出する硫黄酸化物を減らすため、船舶用燃料の高硫黄C重油に含まれる硫黄分濃度の上限を20年に現在の3.5%以下から0.5%以下まで厳格化することを決定。昨年4月には温暖化対策として二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガス排出量を50年までに08年比で50%減らす方針を採択した。

 LNGは排ガス中の硫黄酸化物と粒子状物質(PM)の排出をほぼなくすことが可能なうえ、重油と比べ約30%多くCO2を削減できる。内藤社長は、LNGは「環境対応の選択肢としては非常に有用だ」と話す。

 海運業界では、郵船のほかに商船三井が17年にLNGの取り組み加速に向け組織を改編、18年9月には大阪湾で大型船を牽引(けんいん)するLNG燃料のタグボートを就航させた。川崎汽船は11年から自動車専用のLNG燃料船を研究したが、その後価格が下落した重油と競合したため、実用化には至っていない。

 LNG燃料船建造の課題はコストだ。安定的にガスを気化する装置など構造が複雑なため、重油を使う船よりも高くつくという。建造費をめぐって、内藤社長は個別の業界や企業が費用を負担するのではなく、最終的には社会全体で適正なコスト負担をすることが必要だと指摘する。荷主企業との交渉現場では、環境対策の負担増に前向きな姿勢を示している顧客もいると付け加えた。

 また、同社長はLNG燃料船の普及に伴い、港の供給基地から洋上の燃料船に向けLNGを供給する運搬船も初めて建造し、販売事業も強化すると強調。国内では中部地区から供給事業を始める。国土交通省もLNG燃料供給拠点の整備で補助金制度を創設し、民間企業の参入促進で間接支援している。

 本業の船舶輸送事業ではLNGタンカーを18年度末の71隻から23年度末に97隻まで増やす計画だが、同社長は「数年以内に自社が関与するのは100隻を超える」との見通しを示した。郵船は新中期経営計画の柱の一つとして環境問題への取り組みを掲げている。海運業界では世界初の環境債を発行したほか、運航情報のビッグデータ化など省エネ運航で温室効果ガス排出の規制強化に対応した動きを進めている。(ブルームバーグ Kiyotaka Matsuda)