【2019 成長への展望】伊藤忠商事社長最高執行責任者・鈴木善久さん(63)


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 ■フィンテックで商いの次世代化推進

 --世界経済の景況感は

 「中国経済は減速が目立つ。原材料調達の在庫が積み上がり、注意が必要だ。だが、大きくは落ち込まない。6%の経済成長は公約だけに、減税や公共投資の追加策で達成すると思う。米国も新築の住宅着工や中古の住宅販売が落ちており、巡航速度になっていく」

 --資本提携した中国の国有企業CITICとの協業は

 「顧客データを活用し、金融や保険、フィンテック(ITを活用した金融サービス)の分野に共同で取り組みたい。インフラでは欧州で風力発電事業に参画し、中国で病院運営に参画する事業などが同時並行で進んでおり、長期の視点で進めたい」

 --商いの次世代化を掲げている

 「注力分野は、情報金融やモビリティー、電力の最適化、強みの生活消費のバリューチェーンの展開だ。傘下のファミリーマートを中心に生活消費の新デジタル戦略の中で、まず金融機能が必要になる。フィンテックやデータ利活用による収益化を検討している」

 --具体的な金融事業は

 「子会社化したクレジットカードのポケットカードは、与信機能や480万人の会員が強みで、1000万人の規模にしたい。このほかに、送金・決済アプリや後払い決済サービスのベンチャーにも出資した。ポケットカードに新規の金融機能を集約し、フィンテック事業を基盤に育成したい。ネット広告ベンチャーへの出資を通じ、解析したデータをどう広告収入につなげるかをグループや取引先に提案していく。ベンチャー企業にはアイデアと若さがある。大手は信用力や業務遂行能力、法令順守などバックオフィス機能が得意で、相互に補完し合い、協業していく」

 --モビリティーへの取り組みは

 「出資先の中国EV(電気自動車)メーカーは、スマートフォンの(アプリの)ような車が基本構想で、衝突防止や自動運転などの機能を追加し、アップグレードできる。規制が緩やかな中国は新技術が先行する。中国での実証試験に参画し、新モデルを他国でも展開したい。中国のEV商用車のレンタル事業では、蓄電池リサイクルも手掛けていく」

 --ユニー・ファミリーマートホールディングス(HD)とドンキホーテHDの資本提携の相乗効果は

 「ファミマは仕入れなどを一括で調達するが、ドンキは店舗ごとに顧客目線で、その土地に合った展開を考えるやり方。いいところ同士を組み合わせ、海外展開も協業したい」

【プロフィル】鈴木善久

 すずき・よしひさ 東大工卒。1979年伊藤忠商事入社。常務執行役員、ジャムコ社長、伊藤忠商事専務執行役員情報・金融カンパニープレジデントなどを経て2018年4月から現職。宮城県出身。