ゴーン被告、薄れる同情論 不正次々明るみ、仏政府も姿勢一変

日産自動車の販売店とルノーの販売店に掲げられた看板
日産自動車の販売店とルノーの販売店に掲げられた看板【拡大】

 日産自動車の前会長、カルロス・ゴーン被告による不正は、会長を兼務していた三菱自動車に波及。次々と明るみに出る会社の私物化とも言える行為にフランス国内でも同情論が薄れるなど、ゴーン被告を取り巻く状況は四面楚歌(そか)に近づいている。日産は社内調査で徹底追及し、負の遺産と決別したい考えだが、専横を長年許してきた放漫な企業体質からの脱却が重い課題となる。

意思決定に遅れも

 「率直に言って悲しい」。三菱自の益子修会長兼最高経営責任者(CEO)は18日、記者団を前に嘆いた。三菱自が日産傘下に入ったのは2016年10月。燃費不正問題で経営危機に陥った三菱自への出資を主導し、救いの手を差し伸べたのはゴーン被告だった。

 日産と協力して行った社内調査によると、ゴーン被告は、あらかじめオランダの関連会社から報酬を不正に受け取る仕組みをつくっていた。わずか2年余りで10億円。会長として長く居座れば、三菱自の本体も不正にさらされた恐れがある。

 自動車業界は「100年に1度」といわれる変革期にあり、1社単独での生き残りは難しくなっている。益子氏は「企業連合のメンバーになったことは間違っていない」と語気を強めたが、連合の枠組みがゴーン被告の不正に利用された点は否めない。

 ルノー筆頭株主のフランス政府は、推定無罪の原則からゴーン被告のルノー会長職解任に慎重だったが、ここに来て姿勢を一変させた。「新たな段階に移る必要がある」と、ルメール経済・財務相がルノーにゴーン被告を交代させるよう求めた。

 ゴーン被告の勾留期間は既に約2カ月に達した。起訴された特別背任事件は関係者が多く証拠も膨大なため、公判前整理手続きは「どんなに早くても半年、長ければ1年以上かかる可能性もある」(検察幹部)。ゴーン被告は無実を主張しており、公判自体も長期化することが予想される。

 日産、三菱自が会長を解任した後もルノーだけは会長兼CEOにとどめてきたが、不在が長引けば重要な意思決定の遅れにつながりかねない。国内に約4万8000人の従業員を抱えるルノーの経営がつまずけばフランス経済にも打撃だ。

日産に「忠臣」不在

 日産は社員100人超を動員し、世界規模で不正の社内調査を急いでいる。調査で既に、ゴーン被告がレバノンにある高級住宅の改装費用を送るよう日産役員に督促していたことが判明した。

 「物件の状況で頭がいっぱいだ。迅速な対応を期待する」という督促の電子メールをゴーン被告が送信したのは17年10月。日産が新車の無資格検査問題で揺れていたさなかだった。「全社が死に物狂いだった時に何をやっていたんだ」と日産幹部は憤るが、暴走をいさめる「真の忠臣」が日産にはいなかった。

 ヨットクラブの会費、シャンデリアの修繕費、姉に渡した実態のないアドバイザー料。ゴーン被告の私物化ぶりが明らかになればなるほど、それを見過ごしてきた日産のずさんな企業統治も暴かれていく形で、立て直しの道は険しそうだ。