トヨタとパナ EV電池新会社を正式発表 低コスト・安定調達「最善の選択」

新会社の共同設立について記者会見する、パナソニックの人見健事業開発部長(左)とトヨタの好田博昭パワートレーンカンパニー主査=22日、名古屋市
新会社の共同設立について記者会見する、パナソニックの人見健事業開発部長(左)とトヨタの好田博昭パワートレーンカンパニー主査=22日、名古屋市【拡大】

 トヨタ自動車が電気自動車(EV)向けなどの電池を開発、生産する新会社を共同で設立するのは、世界的な環境規制の強化で需要拡大が見込まれるEV市場の開拓に乗り遅れないためだ。トヨタはEV販売を今後、急速に増やす計画。その心臓部となる電池について、ノウハウを蓄積しながら低コストで安定的に調達できる仕組みづくりに主体的に関わる道を選んだ。

 トヨタ自動車とパナソニックは22日、電気自動車(EV)向けなどの車載用電池を開発、生産する共同出資会社を2020年末までに設立すると正式発表した。大容量・高性能の車載電池を安定供給できる態勢を整え、需要拡大が見込まれるEVの競争力を強化する。他の自動車メーカーにも広く採用を呼びかけ、生産量を増やしてコストを低減。車載電池の分野で急成長する中国勢などに対抗する。

 「電動車の生産は『異次元』の増加になる。量の拡大に向け、最善の選択だった」

 トヨタの好田博昭パワートレーンカンパニー主査は、22日の記者会見でこう強調した。トヨタは2030年に現在の約3.6倍となる550万台以上の電動車を世界で販売する方針。このうち100万台は、EVと水素で走る燃料電池車(FCV)を想定している。目標を達成しながら収益化を進めるため、電池の生産と開発に本格的に関与する一方、パナソニックとの協業で必要となる巨額投資の負担を分散する狙いがある。

 EV普及の課題となってきた航続距離を延ばすためには、電池性能の革新が一段と求められる。トヨタは新会社の設立を機に、性能を大幅に高めた次世代電池「全固体電池」の開発にも弾みをつけたい考えだ。

 トヨタは得意のハイブリッド車(HV)を中心にエコカーの市場開拓を主導してきた。だが、中国政府が今年から、乗用車メーカーに一定比率の生産を義務付けるEVなどの「新エネルギー車」にはHVは含まれない。

 電池分野でも、中国政府のEV産業振興策を追い風に、寧徳時代新能源科技(CATL)が20年までに現状の約2倍の50ギガワット時(1ギガは10億)の生産能力を確保するという。EV向け電池の調達を中国など海外勢に依存すれば、日本の自動車メーカーの価格交渉力が弱まる懸念が指摘されており、トヨタには他の自動車メーカーにも幅広く販売する新会社で「対抗軸」をつくる狙いもあるとみられる。

 電池の価格が高止まりすれば生産・販売するEVの価格競争力も抑えられる懸念があった。市場調査会社のテクノ・システム・リサーチ(東京)は「トヨタには新会社を受け皿にEVの陣営づくりを進め、電池用部材を共同購買して電池コストを下げる効果を狙うのではないか」と指摘している。(臼井慎太郎)