高論卓説

賃上げ見えず景気拡大にハードル 先の読めない日本経済 (2/2ページ)

 この背景には、米中貿易摩擦に代表される「政治リスク」によって、世界貿易が打撃を受け、来年度の業績に暗雲が漂いそうだという経営者の強い懸念がある。実際、中国向け輸出の比重が大きい企業は、業績予想見通しを大幅に下方修正し、対中ビジネス縮小への危機感はじわじわと広がっている。

 仮に19年春闘の実績が、18年だけでなく17年も下回るようなら、実質賃金の前年同月比はマイナス圏で推移する可能性が高くなるだろう。賃金上昇を起点に消費を拡大させ、それが国内の設備投資意欲を刺激し、プラスの循環を生み出そうという政府・日銀のもくろみは、スタート時点から修正を余儀なくされることもあり得る。

 さらに米中摩擦に代表される世界的なリスクが、中国発で広がるようになれば、足元で2.5%成長の路線を維持している米経済にも波及。世界経済の成長率が国際通貨基金(IMF)の19年見通しの3.5%を下回るという事態になれば、輸出企業の業績悪化懸念から日本株の下落を招きかねない。

 外的な環境が大きく悪化した場合は、安倍晋三首相が消費税増税の延期という「カード」を繰り出す可能性もゼロではないだろう。

 変数が多い中で、一つの「解」が見いだせない先の読めない展開が続きそうだ。

【プロフィル】田巻一彦

 たまき・かずひこ ロイターニュースエディター。慶大卒。毎日新聞経済部を経てロイター副編集長、コラムニストからニュースエディター。東京都出身。

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