欧州委、独仏鉄道統合を阻止 中国対抗も「競争損なう」

2017年9月17日、独シーメンスと仏アルストムが鉄道事業統合について開いた共同会見=パリ(AP)
2017年9月17日、独シーメンスと仏アルストムが鉄道事業統合について開いた共同会見=パリ(AP)【拡大】

 【ベルリン=宮下日出男】欧州連合(EU)の欧州委員会は6日、ドイツの鉄道車両大手シーメンスとフランスの同業大手アルストムによる鉄道事業の統合計画について、EUの競争法(独占禁止法に相当)に違反し、禁止すると発表した。世界最大手の中国中車(中国)への対抗のため、独仏両政府も後押ししていた計画は阻止された。

 計画は世界2位のシーメンスが車両や信号機事業を切り離して3位のアルストムを統合し、新会社を設立する内容。両社は2017年9月に発表していた。新会社の売上高は約150億ユーロ(約1兆9千億円)に膨らむが、それでも中国中車の半分ほどだ。

 欧州委は発表で、計画を認めた場合、新会社が域内で信号機システムや高速鉄道車両の部門で支配的な地位を占め、競争が阻害される結果、「価格の引き上げにつながる」と懸念。両社は譲歩も示したが、「重大な懸念に対処しようとしていない」とした。

 欧州委は中国の国営鉄道2社の合併で誕生した中国中車との競争についても検討。その結果、中国中車は中国国内を中心に事業展開しており、国外進出もしているが、近い将来にEU域内の高速車両や信号機の部門で競合する可能性は「低い」と判断した。

 統合をめぐっては、独仏政府が「中国や米国の大企業と競争できる欧州のチャンピオンは必要」(アルトマイヤー独経済相)と訴えていたが、欧州委は域内の公正な競争環境の維持を優先させた。ただ、国際競争が激しくなる中、判断は競争法のあり方をめぐり議論を呼ぶ可能性もある。

 一方、鉄道事業をめぐっては、日立製作所など日本勢も欧州市場に攻勢をかけており、欧州委の判断はその戦略にも影響を与える可能性がある。