今なお続く福島の「除染」 “ドローン×AI”で除去物管理の自動化に挑む企業 (2/3ページ)

仮置き場の様子。高さ3メートルほどある区画が延々と続いている(出典:エアロセンス)

仮置き場の様子。高さ3メートルほどある区画が延々と続いている(出典:エアロセンス)

 そこで、自律飛行型ドローン「AEROBO(エアロボ)」を展開するエアロセンスが、ドローンを使った空撮による点検を提案した。同社はソニーとZMPが出資して設立した合弁会社で、ドローンに関するデータをクラウド上で管理し、データ処理や解析を行う「AEROBOクラウド」といったサービスも提供している。

 まずは、対象の場所にGPS測量機能を内蔵したマーカー「エアロボマーカー」を一定の間隔で設置。地上10メートルの高さでドローンを1区画(約1万平方メートル)につき30分程度、自動飛行させ、100~500枚の高精細な写真を撮影する。その後、マーカーから得られた3次元の位置座標を基に、解析ソフトウェアの撮影データをつなぎ合わせて高解像度の3Dモデルを作成する。この3Dモデルを確認することで、破損が分かるという仕組みだ。

 結果、この手法は南相馬市に採用され、2015年12月にテストをスタート。2016年6月に本格的な点検作業を開始するに至った。しかし、この方法にも課題がないわけではなかったという。

空撮画像からマーカーを検出するのには、オープンソースのライブラリである「OpenCV」や「TensorFlow」を使用したという

空撮画像からマーカーを検出するのには、オープンソースのライブラリである「OpenCV」や「TensorFlow」を使用したという

 破損の検出も「ディープラーニング」で自動化

 いくら画像で確認できるとはいえ、PC上で画像を拡大し、約1万平方メートルもあるシートの中から一円玉程度の破れを見つけるのは時間も労力もかかる作業だ。当時は1カ月当たり50個程度のシートに対して2~3人のオペレーターで作業しており、エアロセンス取締役COO(最高執行責任者)の嶋田悟氏は「作業が終わるまで、1人当たり数時間はかかっていたのではないか。1年近くやっていたが、日常的な業務としては負荷が高かった」と振り返る。

 そこで同社は、ドローン点検の開発と並行して、シートの損傷場所を機械学習で検知するための学習データを集め始めた。オペレーターが探し出した破損場所の画像を正解データとし約1000枚を収集。同社 ソフトウェアアーキテクトの菱沼倫彦氏によると「正解データの数を増やすために、1つの画像を回転させたものを加えるなどして、数を稼いだ」という。

不正解データは約1万枚を用意