【高論卓説】情報格差解消へGAFAの挑戦 安価な空中局開設、新市場開拓効果も

「GAFA」と呼ばれる巨大IT企業(鴨川一也撮影)
「GAFA」と呼ばれる巨大IT企業(鴨川一也撮影)【拡大】

 今、世界で巨大なデジタルデバイド(情報格差)が起きている。世界人口の約20%、およそ14億人がいまだに電気のない生活をしており、その人たちを含め、世界の約半分およそ35億人が住む地域ではまだインターネットが使えない。もともと電気がないのだからインターネットどころではない人たちと、電気はあるがインターネットが使えない人たちを一緒に論じてよいのかとも思う。だが、インターネットは電気、ガス、水道と並ぶ社会インフラであり、インターネットなしには個人も会社も国家でさえ機能を果たすことができない時代なので、重要インフラの欠如という点では同じである。(実業家・平松庚三)

 ということは、世界の35億人のインターネットユーザーと35億人の非ユーザーの間に大きな差が生まれ、やがて経済格差となり、個人間の差は国家間の格差となる。そしてこの差はますます肥大化していく。これが人類にとって良いわけはない。

 全ての物がインターネットを通じてつながり、そのつながりが巨大なデータとなってさらに価値を創造する時代だ。インターネットは現在も未来も人類の進化にとって最も重要な技術革新の産物の一つであると言っても過言ではない。

 インターネットの世界で今覇権を握っているのがGAFAと呼ばれるグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・コムの米4社である。彼らによってわれわれの社会や生活は根本から変わり、今やGAFAのプラットフォームに頼らなければ生活も仕事もできない。

 GAFAが支配する力はますます巨大化し、社会生活はインターネットにより日ごとに便利に豊かになっているからもはや後戻りはできない。今、GAFAを筆頭に世界のベンチャーが残りの35億人にもインターネットを供給しようと大きなチャレンジをしている。

 彼らは高価で時間のかかるインターネット地上局を建設する代わりに、飛行船あるいは気球を利用して空中からインターネット信号を供給しようとしている。安価な浮遊物を地上250メートルの空中でワイヤに固定して信号を送信する。この方法で地上1万平方キロをカバーすることができる。

 これが実現すれば残されたインターネット過疎地域も世界とつながり多様な情報が入ってくる。インターネットユーザーの増加はGAFAにさらなる利益をもたらす。したがって空中局の建設は彼らにとって新市場開拓のための先行投資である。

 では残った電力の問題はどうするのか。幸い世界のどこでも太陽の光が当たらない地域はない。莫大(ばくだい)な資金とエネルギーを費やして発電所や変電所を建設するより、こちらも小型で安価な太陽光発電機を各地に設置する方が圧倒的に効率は良い。

 その発電機の費用は国家や国連、あるいは国際慈善団体が負担するのだろうか。いや、小型太陽光発電装置も空中インターネット局とパッケージでGAFAが設置するかもしれない。

 GAFAの企業価値合計は日本のGDP(国内総生産)に迫る勢いだ。GAFAがイニシアチブを取り世界中の人がインターネットを使えるようになる。夢のような話だが、結局、これってGAFAのコーポレートミッションそのものではないか。

【プロフィル】平松庚三

 ひらまつ・こうぞう 実業家。アメリカン大学卒。ソニーを経て、アメリカン・エキスプレス副社長、AOLジャパン社長、弥生社長、ライブドア社長などを歴任。2008年から小僧com社長。他にも各種企業の社外取締役など。北海道出身。