【Bizクリニック】医療機器の薬機法対応ノウハウ

  産学の共同研究成果を医療機器として市場投入するなら「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)を理解する必要がある。医療機器ビジネスに参入した担当者の多くは「薬機法の対応に想定外の時間とコストがかかった」と話しており、事業の企画時から同法の全体像を把握しておいたほうがいい。(Kompath 代表取締役CEO・高橋遼平)

 医療機器の販売は「組織に対する規制」と「製品に対する規制」の2つの要件を満たす必要がある。また、必須ではないものの、「保険適用を受けること」は価格競争力を高めるために重要な意味合いを持つ。

 まず、組織に対する規制を説明しよう。医療機器に関する事業は原則として許可制で、自社ブランドとして製品を販売するには製造販売業許可を取得する必要がある。医療機器を協力会社として製造するための製造業許可は登録制だが、製造販売業許可は審査が必要で、取り扱う医療機器のリスクに応じても必要な許可が異なる。

 製造販売業許可の取得は簡単ではない。特に体制整備のために製造販売業三役と呼ばれる責任者を3人(条件により兼務可)置かなければならず、新規事業を立ち上げる組織には負担となる。医療機器業界での実務要件を求められる役職もあり、プロジェクトの早期から人員確保に動く必要がある。

 組織に対する規制をクリアした後は、販売に関する製品に対する規制に対応しなければならない。販売する医療機器が人体に与えるリスクに応じてクラスIからクラスIVに分類され、当然ながらリスクが高い機器はより審査が厳しく、コストもかかる。

 またリスクと併せ、従来の医療機器と比較して構造や使用方法、効用が異なるか否かによって、新医療機器、改良医療機器、後発医療機器に分類され、人間を対象とする臨床試験を必要とするかどうかが決まる。

 組織に対する規制と製品に対する規制をクリアした後も、まだビジネス上、重要な手続きが残っている。日本の保険制度では、保険適用を受けた医療機器を用いた病院や診療所などの医療機関は、診療報酬として対価を受け取ることができ、実質的に医療機器のコスト負担は卸値から軽減されている。しかし保険適用には、医療機器として認証または承認を受けた後に別途、厚生労働省の審査を受ける必要がある。このときも、新しい機能や技術が用いられているか否かで保険点数の加算が決定されるため、開発時からの綿密な戦略策定が重要になる。

 法規制対応はいずれも、自前ですべてに対応する必要はない。全体像を把握しておき、実際の手続きについては専門のコンサルタントを起用することで、製品開発やユーザーと向き合うことに力を注ぐのも一つの手段だ。

【プロフィル】高橋遼平

 たかはし・りょうへい 京大経卒。東工大環境・社会理工学院修了。工学博士。2012年三菱商事入社。15年10月医療系ITスタートアップのKompathを設立し、共同創業者兼代表取締役CEO。大学付属病院と共同で医用画像処理アプリケーション開発に取り組む。30歳。東京都出身。