31年度成長率0・4%予測も 米中摩擦長期化に警戒感

 3大証券グループの日本経済見通しが21日、出そろった。平成31年度の実質国内総生産(GDP)成長率は0・4%~1・1%が見込まれ、いずれも政府見通しの1・3%を下回った。戦後最長の景気拡大基調が続く中で、米中貿易摩擦や金融市場の混乱などのリスクを警戒するエコノミストの厳しい見方が示された。

 野村証券の見通しは30年度が0・5%、31年度が0・4%で、いずれも昨年12月時点の予測から引き下げた。美和卓チーフエコノミストは「世界経済の不確実性の増大に直面し、特に外部環境が減速を強めていくだろう」と説明する。

 特に米中貿易摩擦は世界経済を振り回すリスク要因として認識されている。中国では自動車販売の落ち込みが続いている上、スマートフォンなどの対米輸出がいつ持ち直すか見通せない状況だ。すでに日本の輸出にも悪影響が及んでおり、1月の貿易統計では対中輸出が17・4%減った。

 貿易摩擦は米国経済にとっても重しだ。大和総研の熊谷亮丸チーフエコノミストは「対中制裁関税が米国の消費にブーメランのように悪影響を与える。交渉が長引くほど打撃を受ける」と指摘する。

 金融市場では急激な円高の再燃への警戒も広がる。日銀の黒田東彦総裁は19日、円高進行の影響が経済や物価に及んだ場合、「物価安定目標の達成のために必要になれば追加緩和も検討していく」と発言した。

 一方、外部環境とは対照的に、国内景気は公共投資増加や原油価格下落が下支えし、堅調に推移するとの見方が根強い。10月の消費税増税の影響について、SMBC日興証券の牧野潤一チーフエコノミストは「前回増税時と比べ、今回の景気対策は政府から家計にお金を渡すことになり、極端な景気の腰折れにはならない」と予想している。