高論卓説

外国人との共生社会づくり 人材育成へ日本語教育の充実不可欠 (2/2ページ)

 昨年12月25日に政府が決めた「総合的対応策」にも、日本語教育の充実は盛り込まれている。しかし、いまだに誰が外国人労働者の日本語運用能力向上に責任を持つのかが見えてこない。既に「計画」が達成された留学生は、在学中も卒業後も日本で就職をする働き手、担い手である。だとすれば、留学生への日本語教育を基にして、入国、在留する全ての外国人に対する日本語教育の理想の形を考えてみても良いのではないか。

 現在、超党派でつくられた日本語教育推進議員連盟が「日本語教育の推進に関する法律案」を議員立法により今国会に上程するという動きがある。日本語教育の主体は、自治体、国際交流協会、大学、日本語学校、企業、NPO(民間非営利団体)など多様であってよいと思うが、国の責任により施策が進められ必要な予算が確保されることが大前提である。

 日本語を教える人材の育成、確保を含めた総合的な枠組みが確立されない限り、外国人を受け入れる地域は、外国人との共生社会づくりに踏み出すことはできない。全ての外国人が日本語でコミュニケーションを取れる状況をつくり出すことこそ、地域の国際化や活性化にとって何よりも必要なのである。

【プロフィル】井上洋

 いのうえ・ひろし ダイバーシティ研究所参与。早大卒。1980年経団連事務局入局。産業政策、都市・地域政策などを専門とし、2003年公表の「奥田ビジョン」の取りまとめを担当。産業第一本部長、社会広報本部長、教育・スポーツ推進本部長などを歴任。17年に退職。東京都出身。

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