ブレグジットと言われているが…ホンダ「英国工場閉鎖」、その問題の本質とは (5/6ページ)

左はホンダの伊東孝紳前社長、右が八郷隆弘現社長
左はホンダの伊東孝紳前社長、右が八郷隆弘現社長【拡大】

  • 着々と規模の拡大をすすめる東風本田汽車有限公司
  • 東風ホンダでは現在武漢に第3工場を建設中。19年前半から稼働が開始すると生産能力は60万台となる

 問題はドイツと中国の関係が冷え始めていることである。EUの規制をほぼそのまま適用することで、ドイツは自社製品をローカライズの手間を掛けることなく中国で売ってこられた。しかし、これからその仕組みが逆転する可能性が高い。中国が輸出を考えたとき、一番進出が楽なのがEUなのだ。安全規制についはまだ遅れが目立つものの、こと環境規制については、中国国内規制に適合すればそのままEUで販売できる。

 ホンダが中国生産車両をEUに輸出するのはその仕組みに乗ろうとしているだけだ。しかしホンダが意識しているかしていないかはともかく、今後欧中貿易戦争に発展したときにホンダは中国の側にはっきりと旗を立てたと見なされる。

 欧州を舐めてはいけないのは、ホンダはF1で何度も味わってきたはずだ。彼らは都合が悪くなるとルールを変える。そうなったとき、ホンダは欧中戦争の真っ只中に巻き込まれる。

 しかも、そこまでのリスクを取っても、中国法人はホンダと現地法人の合弁であり、得られる利益は半分に過ぎない。そこに危うさを感じるのだ。

 筆者は本気でEUでの巻き返しを狙うなら、タイを中心としたASEAN生産、もしくはインド工場の拡大を考えた方が良かったのではないかと思う。中国での生産拡大には「EUで売れなくても中国でまだ売れるから」と保険をかけている節を感じる。

 改革は成功か失敗か?

 結論をまとめる前に、もう一点念を押しておかないといけないことがある。今回の八郷社長の会見に度々出てきた「電動化」について「EV化」と勘違いして書かれた記事を散見するが、これはもう用語の定義間違いで、お話にならない。

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