決済サービス乱立…そのキャッシュレス、本当にスマホやQRが必要ですか? (1/4ページ)

 2018年以降、QRコード(バーコード)を用いたモバイル決済サービスが多数登場した。スタートアップから大手までプレーヤーの種類はさまざまだが、皆一様に「導入ハードルの低いQRコード方式でキャッシュレス対応店舗を増やす」ことを目標に掲げている。一方で、店舗にとっての導入ハードルの低さは「サービス提供者側にとっての参入ハードルの低さ」とイコールであり、それが決済サービスの乱立につながっている。(鈴木淳也,ITmedia)

 サービス同士の競争は中国での「Alipay」や「WeChat Pay」におけるキャンペーン合戦や急速なインフラ整備にみられるように、ユーザーにメリットをもたらす一方、初期のサービス乱立状態やそれに伴う利用者の混乱を巻き起こす弊害がある。また、サービス乱立状態が長続きしないことも、中国で規制緩和直後のQRコード決済乱立による混乱が比較的早期に収束したことを考えれば明白だ。

 移行期間特有の現象ではあるものの、このあたりのQRコード/バーコード決済(筆者はスマートフォン内のアプリを使って決済を行うサービスを総称して「アプリ決済」と呼んでいる)の最新状況を鑑みつつ、本当に利用者にメリットのあるユーザー体験とはどのようなものかを考えてみたい。

かたくなに現金主義を貫く外食チェーンがある一方、カードやアプリ決済できる店舗は増え続けている

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QRコード決済サービスの数は増えたけれど……

 これまでは専用の決済端末やセンター接続のためのサービス契約など、参入ハードルの高かった決済サービスだが、コード決済によって参入障壁が下がり、過当競争に陥るというのは想像できたシナリオだ。既存事業者がこれを機会にビジネスの幅を広げたり、専業のスタートアップ企業が誕生したりと、このチャンスを逃すべからずとばかりにサービスが乱立する状態になった。「他がやっているから自分たちもやらないと……」という消極的な理由で参入する事業者も少なからずあるようだが、一番の不幸なのは大勢が判明するまでその乱立競争に付き合わされるユーザーや加盟店だ。

 LINE Pay取締役COOの長福久弘氏によれば、2018年後半以降にLINE Payの認知度が向上し、店舗からの問い合わせが急増しているという。サービスの認知こそ上昇したものの、2019年時点で20近いサービスが乱立する状況で、ユーザーがどのサービスをよく利用し、実際に店舗がどの決済を導入するのかを選ぶのは非常に難しい。

 AlipayやWeChat Payを含め、コンビニやドラッグストアでは既に6~7種類のアプリ決済サービスに対応しているところも少なくないが、中小の加盟店にとって個々のサービスを順次契約していくのは非常に面倒だ。「Airペイ」のように、LINE Pay、d払い、Alipay、WeChat Payの4つのサービスに一括契約を申し込めるタイプの決済サービスもあるが、数をそろえるのは大手でないと難しいだろう。

 また、ユーザーが頻繁に利用するサービスが収束し、大勢が判明して乱立状態がある程度解消されるまで1~2年程度の期間しか要さないことも推察される。個々のサービスを契約しても、使わなければ利用料は取られないため、そのまま放置しておくという手もある。だが焦って数をそろえたところで売り上げが一気に増加するものでもないため、2019年10月1日以降の消費税増税や軽減税率導入を見据えつつ、情勢を見極めていくといいだろう。

複数のキャッシュレス決済手段を取り扱えるサービスの1つ「Airペイ」

複数のキャッシュレス決済手段を取り扱えるサービスの1つ「Airペイ」

最近盛り上がりつつある「統一QR」の取り組み