高論卓説

世界経済回復は年後半? 中国過剰債務と米財政拡張で漂う暗雲 (1/2ページ)

 世界経済は今年後半に回復する-。このメインシナリオに死角があるとすれば、過剰債務に直面する中国経済が、経済対策を打ったにもかかわらずズルズルと失速するか、財政拡張に傾くトランプ米政権によるマクロ政策の副作用で、想定外の米長期金利上昇が起きることではないかと予想する。

 日本銀行の黒田東彦(はるひこ)総裁は15日の会見で、短期的に中国や欧州が減速しているとしたものの「中国では大幅な景気対策が打たれており、どんどん減速する状況ではない」と指摘。対中輸出に影響が出ている欧州も含め「年後半には回復するのがメインシナリオ」との見通しを示した。

 この黒田総裁の想定は、グローバルマーケットでの主流的な見方でもある。実際、中国経済に対する海外投資家の評価は悪くないようだ。

 しかし、中国の過剰債務問題は深刻化している。内閣府が国際通貨基金(IMF)や国際決済銀行(BIS)のデータを基に試算した2017年9月末の中国の民間非金融部門債務残高の対名目GDP(国内総生産)比は、約275%に達している。また、16年の名目GDPが2000年の約10倍なのに対し、債務残高は17倍に膨張していた。

 過剰債務を抱えた企業に対し、金融機関が新規に融資を実行しても、新たな設備投資には向かわず、利払いに当てられるいわゆる「追い貸し」状態に陥りやすい。

 また、多くの企業で債務返済を同時に始めると、そのことが需要減少に結びついて、デフレ的現象を生むことになるのも、日本で経験したことだ。

 その中国で、19年に企業の税金や手数料を約2兆元(32兆円)削減するなどの経済対策が打ち出されても、どの程度の需要押し上げ効果を持つのか、疑問の声を上げるエコノミストは少なくない。

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