【成長への挑戦 熊谷組の120年】(5-5)社会貢献できる会社でありたい (1/2ページ)

インタビューに答える熊谷組の櫻野泰則社長
インタビューに答える熊谷組の櫻野泰則社長【拡大】

  • 月に1回、働き方改革ワーキングで施策を検討している

 ■櫻野泰則社長インタビュー

 創業120年を迎えた熊谷組。激動の時代を乗り切ってきた同社だが、時代の変化はなおも続く。人口減少、グローバル化、IT化…。不透明感を増す今後の経済社会の中で、次の100年をどう描くのか。熊谷組の櫻野泰則社長に展望などを聞いた。

 --平成はどんな時代だった「一言でいえば波瀾(はらん)万丈。1989(平成元)年度)には建設受注高1兆円を超えており、スーパーゼネコン5社に追い付くような勢いだった。1990年度には売上高1兆2000億円、営業利益は600億円の最高益を出したが、その後一気に谷底までドーンと落ちこみ、そこから20年間大変な思いをした。株主や金融機関や協力会社、取引先、社員を含め多くの方に迷惑をかけた。再建期、再生期を経て、いまようやく成長を口にできるところまできた」

 --昨年発表した中期経営計画では「成長への挑戦」を掲げた。「業績の回復を受け、前任の樋口靖社長が『新生熊谷組』を表明し、成長の道に入った。一時だけの業績拡大ではなく、企業価値が高まっていく持続的な成長を成し遂げたいという強い挑戦心を表す意味を中計のテーマに据えた」

 --建設市場の状況は

 「手持ち工事は潤沢で、中計の目標としている2020年度売上高4600億円、営業利益330億円は手が届きそうなところまできている。工事を単発で請け負って終わりではなく、その後の保守、管理、運営を含めた事業形態に変わりつつある。ただし、建設市場が急速に拡大する状況でもない。例えば行財政が厳しくなれば、架け替えが必要な橋が2つあっても1つしか改修しないといった選択がなされるかもしれない。中長期経営方針に据えた2022年度売上高5000億円、営業利益500億円という目標を掲げたが、達成には新事業創出、他社との戦略的連携を推し進めていく必要がある。建設請負の波は今後もありうるし、少子高齢化が進む国内では市場の先細りは必至とみている」

 --住友林業との提携は成長への布石だ

 「建設資材として木材の可能性は大きい。将来的にRC造(鉄筋コンクリート造)やS造(鉄骨造)の3~4%が木造になるという調査研究があり、3000億~4000億円の市場規模が見込まれる。住友林業は、2041年を目標に高さ350メートルの木造超高層建築物を実現する構想『W350計画』を打ち出しているが、今後の研究過程で木材の用途は相当広がっていくだろう。われわれがもつ高層建築や土木工事のノウハウと組み合わせて実用化が見えてくる分野もある」

 --その他のシナジーをどう描く

 「具体的なのは再生エネルギー分野での協業。バイオマス発電事業にも積極的にかかわっていきたい。住友林業の社有林資源などを効率的に切り出し、間伐材などをエネルギーとして活用する事業は魅力的だ。また、住友林業は米・豪やアジア地域などでも海外事業を幅広く行っている。当社は台湾などを除き、事実上海外から撤退した経緯があるが、今後再進出を図る際、両社で協力していければ理想的だと思う。今回、資本面でも提携したのは、提携の効果を絶対に出すという本気度を示す意味が大きい。少子高齢化は住宅メーカーにとっても市場のシュリンクを意味している。次代に向けて互いに協力し、先手を打って状況を打開していく必要がある」

 --次の100年をどう見通す

 「100年後は人口が5000万人と半減し、ほぼ大正時代の水準になる。業界の淘汰(とうた)もあるだろうし、会社の規模を維持するには相当難しいだろう。IoT(モノのインターネット化)や人工知能(AI)がどこまで進むかもまだ見通せないが、間違いなく現在のような労働集約型の産業ではなくなるのではないか。今できることは、無駄な価格競争を避けながら、新事業の創出を急ぎつつ、生産性を向上していくしかない。ただ、世の中のためになる仕事を続けたいという当社のDNAは残っていくだろう。創業120周年を迎えた昨年5月、役員全員で創業家に墓参し、今後も社会貢献できる会社として持続していくという誓いを立ててきた。自然と調和のとれた人間活動の場を提供するという理念を掲げ、これからも建物に愛を込めていきたい」

【プロフィル】櫻野泰則

 さくらの・やすのり 京都大学経済学部卒。1981年熊谷組入社。2010年管理本部人事部長、11年執行役員、12年取締役、14年常務取締役、29年専務取締役を経て18年4月から現職。富山県出身。61歳。

“働き方改革”にも挑む