地域社員に異動、定年後再雇用に職務加算…三井住友海上火災が人事制度に導入

 三井住友海上火災保険は、勤務地を限定した総合職の「地域社員」が一定地域内で転居・転勤を伴う異動を選択できるコースを新設するなど新たな人事制度を4月から導入する。定額制だった定年後再雇用社員の給与は、人事考課や職務を反映した体系に改定する。年次有給休暇を1時間単位で取得できる制度も設けて社員の柔軟な働き方を後押し、就労意欲を高めるのが狙いだ。

 地域社員に新設する「ワイドエリア」コースは全国を10地域に分け、在籍する地域内なら原則3年の期間で転居・転勤でき、満了後は本人の本拠地から通勤できる勤務地に異動する仕組み。勤務地限定で転勤がない従来の「エリア」コースからの転換を年1回、受け付ける。転居・転勤により新しい部署や市場で経験を積み、社員の個々の能力、スキル向上につなげる。

 現在約6800人の地域社員の大半が女性で、新制度により活躍の選択肢が増えることから将来の女性管理職の登用にもつながる。「ワイドエリア」コースを選択した女性社員が結婚、出産、育児といったライフステージの変化で転居・転勤が困難になった場合は、「エリア」コースに戻ることができるのも特徴だ。

 「ワイドエリア」コースには、昨年秋に応募した約100人が4月に転換する見通し。新卒社員については、現在募集中の平成32年春採用から導入する。

 再雇用のシニア社員向けの新しい処遇体系は人事考課で給与が昇降するほか、業務内容に応じて「職務加算」を設ける。同時に、限定してきた勤務地を本人の同意の上で海外も含めて転居・転勤できる制度も導入する。

 現在の定年は60歳で、原則65歳まで働くことができる。人事考課に応じて賞与も支給しているが、給与は基本的に月20万円の定額制。新体系への移行でシニア社員の働く意欲やモチベーションを引き出す。定年を控える社員が将来を展望できる効果も期待できる。

 損害保険会社には、アクチュアリー(保険数理人)など専門分野を担うシニア社員も多く、新体系では最大15万円が職務加算されるケースもある。シニア社員の平均年収は現在340万円程度だが半数以上が25万円程度上昇し、600万円程度に引き上げられる社員も出るという。

 三井住友海上火災は「多様な社員全員が成長し、活躍する会社」を目指して28年10月から働き方改革に取り組んでおり、新人事制度の運用で流れを加速したい意向だ。