【ビジネス解読】10年で10万円アップ 「見えない増税」、健保組合の保険料 (3/3ページ)

訪問診療をする医師=茨城県常陸太田市(宮川浩和撮影)
訪問診療をする医師=茨城県常陸太田市(宮川浩和撮影)【拡大】

  • 健康な歯を保つには定期的な検診が有効だ=東京都千代田区(大山実撮影)

 保険料率の引き上げは「見えない増税」とも位置づけられる。大和総研は昨年10月、各家庭の実質可処分所得が7年前よりも数十万円少なくなっているとの試算を発表した。実質可処分所得とは給与から所得税や住民税のほか、健康保険や公的年金などの社会保険料を差し引くなどした「手取り収入」だ。

 片働き4人世帯で年収500万円の場合、7年前なら税金や社会保険料を引かれた後でも434万円が手元に残っていたが、30年では408万円しか残らない。共働き4人世帯で年収1千万円なら、手取り収入は818万円だったはずが、780万円にまで減ってしまった。社会保険料引き上げや26年4月の消費税増税、「子ども手当」の縮小などが影響した。

 見えない増税

 会社員の多くが加入する厚生年金保険の保険料率は法律で定められた段階的な引き上げがすでに終わっており、これ以上の引き上げは予定されていない。また消費税率は今年10月に10%まで上がる予定だが、さらなる引き上げを検討するだけで政治問題化することは確実だ。

 こうした中、今後も拡大が見込まれる医療費のツケは、健保に回される可能性が高いとの見方は多い。見えない増税はこれまでも大きな政治的議論になることなく進められており、健保の保険料率はこれからもじわじわと上がり続けていくおそれがある。

 健保連は後期高齢者が医療機関で支払う窓口負担を増やすなど、「高齢者にも応分の負担を求めることが必要だ」と主張。さらに税制の見直しなどで、医療費負担に必要な財源を国民全体から集める必要があるとしている。

 給与からの天引き額が知らぬ間に引き上げられることを避けるためにも、国民的な議論が必要といえそうだ。(小雲規生)