5G、法人向け収益化が鍵

 自動運転やモノのインターネット(IoT)などを実現可能にする高速大容量の第5世代(5G)移動通信網には、産業や人々の生活を一変させる期待が高まる。国内の携帯電話の回線契約が頭打ちになる中、携帯電話各社は、5Gをてこに新たな収益源の開拓を模索する。ただ、消費者への5G普及には課題も多く、産業面での活用が黎明(れいめい)期の成功の鍵を握る。

 海外では一足早く、一部でスマートフォン向けサービスが始まった。消費者向けにはスポーツ観戦やコンサートを遠隔地でも現地にいるかのような臨場感で楽しめるなど、サービスが想定されている。

 だが、日本では消費者向けサービスには時期尚早との見方もある。

 各社は現行の4Gの料金水準から大幅な引き上げはしない方針だが、政府からの要請で料金値下げが予定されている中、5Gは相対的に割高な料金設定になる。野村総合研究所の調査では携帯電話利用者の約6割が料金を「高い」と感じている。新サービスとはいえ、割高な利用料を払う消費者がどれくらいいるかは未知数だ。

 また、5Gに対応した端末は4Gのスマホに比べ数万円割高になるといわれる。上位機種では10万円超が当たり前になった現状では、対応端末の普及にも時間がかかりそうだ。各社は法人向けサービスで軌道に乗せ、端末や通信網の広がりとともに消費者に浸透させていく普及戦略をとる。

 携帯電話各社はスタートアップ企業への出資や、企業・自治体などとの協業で、通信と異業種を掛け合わせた新サービスの開発を加速させる。

 5Gは人工知能(AI)やIoT、ITを使った先進的な金融サービス「フィンテック」といった最新技術と組み合わせて初めて真価を発揮する。

 少子高齢化で大きな成長が期待できない国内市場で、事業領域を広げる絶好の機会となる。ソフトバンクは、トヨタ自動車と共同出資し、移動サービスを提供する新会社を設立、自動運転の実現を目指している。NTTドコモはコマツとの協業で、建設機械を遠隔操作する実証実験を実施している。

 楽天が寡占状態の携帯電話市場にあえて参入する狙いもここにある。楽天の三木谷浩史会長兼社長は「オープンな形でさまざまな企業と提携してやっていく」と話した。

 実用間近なのは、高精細な画像や映像を通信する遠隔点検だ。KDDI(au)は日本航空と連携し、機体の高精細な4K8K画像を伝送し、遠隔地の熟練技術者が点検する実証実験を実施した。高精細な画像では、航空機の全体を撮影した1枚の画像でも、拡大して細部まで確認することができるため、遠隔地にいる熟練の作業員が適切な指示を出せる。

 高精細の8K画像は人の目の認知能力を超えているといわれ、対応テレビの販売には直結しなかった。消費者生活への影響は小さかった技術だが、今後は街の全景を映したライブカメラと映像から火災などをAIが検知するサービスなどへの活用が広がりそうだ。(高木克聡)