国産サイバー技術、世界市場へ 最大の展示会に「日本パビリオン」初出展

「RSAカンファレンス」に初出展した「日本パビリオン」=3月上旬、米サンフランシスコ(共同)
「RSAカンファレンス」に初出展した「日本パビリオン」=3月上旬、米サンフランシスコ(共同)【拡大】

  • 多くのセキュリティー関係者でにぎわう「RSAカンファレンス」=3月上旬、米サンフランシスコ(共同)

 情報セキュリティーの製品・サービスを手掛ける日本企業でつくる団体が3月、米国で開かれた世界最大のサイバー技術展示会に初めて「日本パビリオン」を出展した。この分野は米国やイスラエルなど海外企業の存在感が大きく、日本は大きく後れを取る。この現状を変えようと、官民が連携し国産技術を世界に広げる取り組みを本格化させた。

 ◆流れ変えた政府支援

 「ようやく本場米国の舞台に立てた」。参加企業から派遣された若手社員らは高揚感に包まれていた。世界中から集まる企業関係者らがひっきりなしに訪れ、大型モニターを使ったサイバー攻撃分析ツールのデモには人だかりができた。

 3月上旬、米サンフランシスコであった世界最大の情報セキュリティーの祭典「RSAカンファレンス」。日本の業界団体「日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)」が、総務省の全面支援を受け「日本パビリオン」を初出展した。

 出展はJNSAの悲願だった。RSA展示会では近年、イスラエル、ドイツ、韓国、中国などのパビリオンが常連となり、自国技術のアピールを競う。昨年の展示会を見た日本関係者は「日本の存在感は皆無」と危機感を強めていた。

 JNSAは4年前から出展を構想。しかし資金面などがネックだった。ここに来て追い風となったのは政府の動きだ。自前のサイバー防衛力を高めたい政府は、昨年決めた新しい「サイバーセキュリティ戦略」に国産ビジネスの強化を盛り込んだ。今回の総務省支援は同戦略に基づく。

 これまでも政府が単発事業の支援をしたことはあったが、継続的な支援方針を打ち出しているのが特徴だ。

 「よい販売パートナーに出会えた」。参加企業の一つ、エムオーテックス(大阪市)の中本琢也経営企画本部長は声を弾ませた。同社は企業内にある多数のパソコンを一括監視し、情報流出事故などを防ぐソフトウエアを扱う。ブースを訪れた米国企業が、技術を高く評価し、商談が一気に進んだという。

 日本では1万社以上が導入する製品だが、4年前に進出した米国事業は一度挫折した。米国人社長を雇ったが、製品の良さがうまく伝わらず事業は軌道に乗らなかった。撤退を考えたが昨年9月、日本人1人を残した新体制に変更し、米コンサルタントと協力して「再チャレンジ」(中本氏)している。

 失敗から学んだ同社は、ホームページなどを全面的に見直し、米国内での認知が少しずつ上がっている。協力する米国人技術者、デビッド・デュプイース氏は「日本で実績のあるこの製品は非常に安定している」と絶賛。「競合は多いが勝ち目はある」と語った。

 日立システムズ(東京)が世界展開を進めるサイバー攻撃監視サービスも来場者の関心を引いた。発電所や鉄道のシステムといったIoT(モノのインターネット)分野の監視もできるのが特徴だ。幹部は「グループで鉄道などをやっているからこそ可能。そこが強みだ」と強調した。

 ◆700超の企業と競争

 パビリオンには企業7社と政府系研究機関が参加。国のパビリオンとしては最小の広さだったが、期間中に51カ国の2000人以上と交流できた。JNSA海外市場開拓WGリーダーの一宮隆祐氏(NEC)は「期待以上の成果」と話す。

 一方、参加メンバーらは国際競争の厳しさも実感した。巨大な展示会場には、700以上の企業がひしめき合い、創業間もない「スタートアップ」企業がイノベーションを引っ張る姿も目立った。日本ではこの分野のスタートアップは少ない。劣勢を挽回するためには政府によるベンチャー支援など多角的な方策が必要となりそうだ。

 一宮氏は「課題を知るためにも継続が大事だ」と語った。日本は来年も出展する方針。既に今年の2倍のスペースを仮予約した。挑戦は続く。