高論卓説

「AI」に過信は禁物 不足分を補い積極的に利活用を

 シャープがこのほど、独自に開発した主な最新技術を一堂に集めて公開した。年内に発売したいという一眼レフ程度の大きさにまで小型化した8K対応のカメラや、橋などの老朽化を画像解析で診断するシステムなどのように、まだ市場に出していないものも多かった。(森一夫)

 折りたためる有機ELの小型ディスプレーは、既に一部で報じられた。シャープは経営危機に一時陥ったが、鴻海精密工業グループの傘下に入って立ち直り、新しい技術を積極的にアピールしたいのだろう。興味をそそられた一つは、やはりAI(人工知能)技術の応用である。

 「AI」は最近、さまざまなところで顔を出すマジックワードである。「この製品はAIを駆使しています」と言われると、黙っていても、こちらの望む通りのことをしてくれるような気にさせられる。ICT(情報通信技術)を活用した金融サービスのフィンテックから自動翻訳まで、どんどん便利になっている。

 しかし現状では、過信するのは禁物である。シャープのスマートテレビは視聴者の好みを学習して、見たい番組を提案してくれる。冷蔵庫は中に入れてある食材に合ったレシピを教えてくれる。

 だけどバラエティー番組や旅行番組がいくら好きでも、同じ傾向の番組ばかり勧められたら飽きる。「他に面白いのはないの?」にはまだ答えられない。

 似たようなことは、「アマゾン」を利用しても経験する。本を検索したり買ったりすると次には、お勧め本が表示される。なるほど、こちらの興味にそうような本が並ぶので、よくできているとは思う。しかし書店で全く新しい分野の本を偶然見つけて買う場合がある。アマゾンなどでは、まだそこまでは期待できない。購買データから類推できる域にとどまっている。

 13日付の日本経済新聞1面に「だまされたAI」という記事が載った。アマゾンの日本サイトで「一部の出品業者による偽ブランド品」がAIのチェックをすり抜けて売られていたという。人間の目利きにはまだかなわないようである。

 日本将棋連盟の2018年度の将棋大賞で、16歳の藤井聡太7段が升田幸三賞を受賞した。AIの将棋ソフトも思いつかない妙手を実戦でさしたことが認められたからである。他のプロ棋士たちも舌を巻くほどだという。

 常識を破る新手を編み出すのは、今のところ人間なのだ。もう一つ注意すべきなのは、ブラックボックス化である。素人にはその結論をどのように導き出したのかが見えない。例えば人事評価にAIを使う場合を想定したら分かる。多種類の項目の評点を入力して、機械的に総合評価を算出した結果で、人事などを決められるだろうか。

 「おかしい」と思っても、なぜそうなったのかが分からない。参考にするだけならいいのだが、「AI」というマジックワードに引っ張られると危険だ。

 ブラックボックス化の落とし穴はコンピューターが普及した頃から懸念されてきたが、機能が限られていたので、さほど深刻にならなかった。しかしAIは人間に近づくだけに、厄介な問題になる。

 だからといって甘く見て敬遠したら退歩につながる。AIの技術は日進月歩である。足らざる点を踏まえて、積極的に利活用していく姿勢は必要だ。

【プロフィル】森一夫

 もり・かずお ジャーナリスト 早大卒。1972年日本経済新聞社入社。産業部編集委員、論説副主幹、特別編集委員などを経て2013年退職。著書は『日本の経営』(日本経済新聞社)、『中村邦夫「幸之助神話」を壊した男』(同)など。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus