高論卓説

組織の成功に欠かせぬ信頼関係 主役支える図式崩れれば迷走 (2/2ページ)

 ユーミンの舞台には、プロダンサーも上がり素晴らしいダンスを披露する。聴くだけではなく、目も楽しませてくれるショーとして、その完成度は高い。

 何やら音楽評論めいてしまったが、40年以上、音楽を作り続け、数え切れないほどのコンサートを成功させてきた二人は、自らの個性を強烈に打ち出しながら、全てをまとめる組織のリーダーであるといえよう。

 真摯(しんし)な姿勢を示す二人と、それをリスペクトするアルティザンたちの協働により導かれている成功なのだと私は思う。ユーミンは先日のコンサートで、「これまでずっと続けてきたことは、自分でも誇れる」という趣旨の話をしていた。取り巻く人々との強固な信頼関係から、口に出せる言葉なのだろう。

 私のような部外者には、陰謀か謀略か、はたまた中傷かは分からないが、日産自動車、ルノーの役職を剥奪されたカルロス・ゴーン氏の事案のように、企業経営で経営トップと持ち場持ち場で働く企業人の信頼関係が確立されなければ、たちまち組織は迷走する。くしくもゴーン氏はユーミンと同じ1954年生まれ、生誕は2カ月と違わない。そして達郎さんは、二人のちょうど1歳、年長である。

 同世代三人の境涯に思いをはせながら、人は何を求めどこを目指して生きていくのか、改めて考えさせられた。この春、社会に飛び出したばかりの若者たちにも、このことはぜひ、考えてもらいたい。

【プロフィル】井上洋

 いのうえ・ひろし ダイバーシティ研究所参与。早大卒。1980年経団連事務局入局。産業政策、都市・地域政策などを専門とし、2003年公表の「奥田ビジョン」の取りまとめを担当。産業第一本部長、社会広報本部長、教育・スポーツ推進本部長などを歴任。17年に退職。東京都出身。

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