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金融機関が資料要求、再生企業の障害に

 金融機関は、支援を行っている再生企業に対し、業績が経営改善計画通りに進んでいるかを定期的にモニタリングする。その中で、金融機関のある要求が再生の障害となっている。(レヴィング・パートナー代表取締役・寺嶋直史)

 その1つは、再生企業の社長にさまざまな資料の提出を要求することだ。支店の銀行員は、再生企業の状況を定期的に本部へ報告する。業績が経営改善計画より下回っている場合、本部への説明資料のために、資料作成を要求するケースが多い。

 再生企業の社長は、債権者である金融機関が要求する資料を全て作成しようとする。社長は自社の事業に関する専門性は高いが、数値は総じて苦手であり、作成に時間がかかってしまう。その結果、本来は本業の仕事に集中すべきなのに、それがおろそかになってしまうのだ。

 資料作りの支援を行う銀行員は少なく、多くの銀行員は全ての資料の作成を再生企業側に求める。資料が作成できない場合は「できない社長」というレッテルを貼り、非難する。

 もう1つは、経営に口を出す銀行員だ。銀行員は基本的に、経営のノウハウを持っているわけではなく、事業の現状把握も不十分な場合が多い。損益計算書や貸借対照表だけを見て、会社の状況を分かったつもりになっているのだ。中長期的視野で経営全体を踏まえて提案する銀行員はまれで、思い付きの主張をしているに過ぎない。

 これが施策レベルの細かい内容であれば、ミスリードしても大きな問題にはならない。しかし、経費削減のためにリストラを要求されたら、その後の運営に大きな影響を及ぼしてしまう。

 例えば店舗閉鎖や事業撤退。大幅な経費削減ができるものの、必要な人材の継続雇用やリース料、本社機能の経費負担など当該店舗の固定費はある程度残り、それを他の店舗で賄わなければならない。中小企業は店舗数が少ないので、その負担が重く、他の店舗の業績まで悪化させることになってしまう。また、各業務のメイン担当者を解雇すると、現場で統制できる人材がいなくなり、その後の運用が著しく悪化するケースがある。

 これらは、一度実施してしまうと取り返しがつかない。一方で銀行員は、業績が悪化しても責任を取らないどころか、謝罪もせず、社長に責任を押し付ける。

 事業は社長の自己責任が問われるのだから、銀行員の指示があったとしても、後戻りできない経営判断は慎重に行う必要がある。

【プロフィル】寺嶋直史

 てらじま・なおし 摂南大工卒。1992年東芝入社。2010年3月、レヴィング・パートナーを設立し現職。事業再生コンサルを行う傍ら、「経営コンサルタント養成塾」の塾長として財務分析、経営改善、事業計画、金融機関対応、マーケティング・ブランディングなどを講義。著書に「事業デューデリジェンスの実務入門」など。50歳。大阪府出身。

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