都市の上空をクルマが飛び交う-。そんなSF映画さながらの未来図は、決して絵空事ではない。海外では、ベンチャー企業から大手企業まで、さまざまな企業が「空飛ぶクルマ」の開発競争を繰り広げ、日本でも実用化に向け、官民一体の取り組みが本格化してきた。空を活用した次世代の移動手段による「空の移動革命」への挑戦は、日本経済に何をもたらすのか。
点から点への移動
「2050年までに誰もが自由に空を飛べるようにしたい」。若手技術者の団体「カーティベーター」の福沢知浩共同代表は昨夏に開かれた政府の「空の移動革命に向けた官民協議会」の初会合で、空飛ぶクルマの開発にこう意気込みを示した。
空飛ぶクルマに明確な定義はないが、海や川といった障害を飛び越えて移動する乗り物の全体を指す。経済産業省は電動で垂直に離着陸し、自動運転で飛行する航空機を空飛ぶクルマと位置づけている。
電動化で内燃機関が不要になり、部品数が少なくなることから整備費が抑えられる。自動化が進むことで運航費も安くなる。垂直に離着陸できるため、滑走路がなくても点から点への移動が可能だ。
どんな用途が想定されているのか。渋滞が激しい都市部では移動時間の短縮に役立つ。災害時には、人命救助や物資支援での活用が見込まれる。交通が不便な離島や中山間地域での移動手段としても期待される。