高論卓説

アフリカ開発に日本独自路線 対等な協力姿勢は「一帯一路」しのぐ (2/2ページ)

 欧米諸国は、アフリカの開発について「植民地化した過去の歴史から、ドーネーション(寄付)の色彩が強い」と、国際協力機構(JICA)の北岡伸一理事長は講演で述べている。根底には、贖罪(しょくざい)の念がある。

 JICAと日本の大学や企業が積み重ねてきた、アフリカ開発に臨む姿勢は「対等な協力」である。例えば、北海道大学人獣共通感染症リサーチセンターが1998年、ザンビア大学・サモラマシェル獣医学部に海外拠点を設けて、現地の研究者とともに出血熱ウイルスや結核菌、ペスト菌などの研究をしている。セネガルでは、カゴメがトマト栽培の技術指導とトマトペーストの輸出産業を育てている。ルワンダの日本留学の経験者たちは、「Suica」や「PASMO」のようなサービスと始めている。

 とはいえ、アフリカにおける日本の存在感は、今のところ大きいとはいえない。対アフリカの輸出額と輸入額は2018年にそれぞれ約9000億円にすぎない。在留日本人は、約8000人。巨大経済圏構想「一帯一路」政策によって、アフリカのインフラ事業を通じて橋頭堡(きょうとうほ)を築いている、中国は約100万人もが在留している。エジプトの新首都計画に投資し、紅海の入り口のジブチでは大規模な港湾開発を手掛ける。

 ショニバレ氏の展覧会の最後に置かれた、アフリカンプリントのドレスをまとった地球儀の頭の人形は、銃を構えて銃口から満開の桜の枝が大きく開いている。芸術作品は多義性を持つ。桜の国・日本は破壊ではなく、アフリカと対等な関係を結べば「一帯一路」をしのぐと、私にはみえた。

【プロフィル】田部康喜

 たべ・こうき 東日本国際大学客員教授。東北大法卒。朝日新聞経済記者を20年近く務め、論説委員、ソフトバンク広報室長などを経て現職。福島県出身。

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