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LIXIL前CEO側の勝利も残る火種 

 LIXIL(リクシル)グループで繰り広げられた経営の主導権をめぐる争奪戦は、前社長兼最高経営責任者(CEO)の瀬戸欣哉氏側の勝利に終わった。前身のトステム創業家出身の前会長、潮田洋一郎氏や前社長の山梨広一氏のコーポレートガバナンス(企業統治)に対する株主の不信感が背景にある。ただ、トステム創業家に近い取締役も選ばれるなど火種は残り、瀬戸氏も真価が問われることになる。

 「昨年の瀬戸CEOの不可解な解任などで、潮田氏や山梨氏のガバナンスは疑問視されていた。その流れをくむ(取締役候補者の)会社提案にも不信感があった結果だ」

 ある機関投資家は、“想定外”ともされる瀬戸氏側の勝利について、こう分析する。

 今回の株主総会に向けては、取締役候補者の選任案をめぐり、多くの株主が会社提案には批判的だが、否決する根拠も乏しいとして、態度を決めかねていた。だが、有力な議決権行使助言会社の米インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)が、会社提案のうち、前ベネッセホールディングス副会長の福原賢一氏、元関東財務局長の竹内洋氏の2人は推奨しないと表明。これをきっかけに総会でも、この2人は選任しない流れになり、会社側の思惑が狂った。

 ただ、会社側の提案で社外取締役に選任された元リコー社長の三浦善司氏らは、総会前に瀬戸氏から求められた対話を拒否していた。こうした姿勢が変わらなければ経営をめぐる混迷は続く可能性もある。

 株主総会で瀬戸氏側の提案に賛成した東京都の60代の無職男性は、リクシルグループ取締役を辞任した潮田洋一郎氏の父が創業したトステム出身の大坪一彦氏が新たに取締役に選ばれたことを問題視。「本当に創業家の影響を排除できるのか」といぶかった。

 一連の騒動を受け、リクシルグループの株価は低迷している。総会を終えて会場を後にした愛知県常滑市の男性会社員(57)は「これでノーサイドだ。会社側も瀬戸氏側もなく、企業価値の向上に向けて一丸となってほしい」と期待を込めた。

 リクシルは平成31年3月期連結決算(国際会計基準)で、521億円の最終赤字に転落(前期は545億円の黒字)。瀬戸氏は今後、業績回復という実績で、株主の信任に応える必要がある。

(平尾孝、大坪玲央)

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