プロジェクト最前線

三井物産、モザンビークのLNG開発 途上国でビジネス創出、「国づくり」に貢献 (2/3ページ)

 備蓄基地に大統領を案内

 だが、14年中ごろから雲行きが怪しくなる。国際的な需要の落ち込みで原油や鉄鉱石などの資源価格が急落し、資源開発にブレーキがかかる。

 三井物産は16年3月期連結決算で、資源の減損処理をして最終赤字を発表した。資源以外の非資源への投資にかじを切ったことから、プロジェクトの工程も後ろ倒しを余儀なくされた。

 ちょうどその頃、モザンビークでも想定外の問題が起きていた。16年4月、約1100億円超の国営会社未払い問題という政府の「隠れ債務」が発覚。主要な援助国や国際機関が一斉に新規融資を止め、海外からの投資も落ち込んだ。

 流れが変わったのは17年3月。両国の外交樹立40周年で、ニュシ大統領が日本を公式訪問した。安倍晋三首相との首脳会談も行ったが、債務問題が尾を引き、政府は円借款供与など経済支援は打ち出せなかった。

 だが、この機を逃す手はない。三井物産の安永竜夫社長は、ニュシ大統領を東京ガスのLNG備蓄基地(千葉県袖ケ浦市)に案内し、当時社長だった東京ガスの広瀬道明会長も国家元首を歓迎した。東ガスは、モザンビークで産出されたガスをセ氏マイナス162度に冷却・液体化してLNG船で日本に輸送。輸入基地で液体を再び気体化し、消費者に届けたり、ガス発電に使われたりする様子を丁寧に説明した。

 こうした経済外交が功を奏し、ニュシ大統領は帰国後、LNG事業の意義を国会などで度々言及したという。

 販売交渉も動き出した。安定調達先の多様化や転売の柔軟な対応を目的に、東ガスは18年6月、提携する英ガス・電力大手セントリカと共同でモザンビークLNGの長期販売契約で基本合意。今年2月に正式契約した。英国企業と組むことで、需要に応じて柔軟に販売できる強みを得た。今年5月時点で、1200万トンの生産のうち9割以上の販売が決まった。

 現地のLNGプラントの建設予定地周辺では、病院や学校、警察など新たなコミュニティーが急ピッチで進む。野崎執行役員は「今後は現地で溶接などの訓練センターを設置し、雇用創出に加え、技術者の育成や教育にも貢献したい」と意欲を燃やす。

 安永社長は「収益への貢献だけでなく、国づくりにも貢献できる重要プロジェクト」と語り、社長就任以来、投資決定の方針がぶれることはなかった。

 三井物産は、ブラジル資源大手のヴァーレと共同で、モザンビーク・テテ州の原料炭権益と、テテ州からナカラ回廊を横断し、輸出港までの貨物鉄道運営の一体開発にも参画した。ニッポンの一企業のプロジェクトは、地球の裏側にある発展途上国の成長に貢献しつつある。(上原すみ子)

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