シリーズ エネルギーを考える

危機に備え自給率高める必要がある (2/3ページ)

 -40年以上前に起きた石油ショック再来の心配もあるということですか

 「日本人の多くは、時間の経過とともにエネルギー安全保障のことを忘れがちです。石油ショックを記憶している年代の人も、自分たちが生きている間にはもう起こらないだろうくらいに考えてきたかもしれませんが、今の中東情勢は明日にも(石油ショックが)起こるかもしれないというところまできていると思います。安倍晋三首相が6月に、政治リスクを取りながらイランを訪問したことは非常に重要なことです。中東全体の安定化のために日本が汗をかかなくてはいけない時代がきています」

 国民理解と規制の適正化

 -アジアに目を向けても、米中貿易戦争の激化や尖閣諸島問題、北朝鮮の核問題など日本の安全保障環境は大きく変化しています

 「トランプ米大統領が日米安全保障条約は不平等と発言していますが、ある意味では正しい指摘です。戦後日本の平和は、日米安保のもとで米国の防衛力に守られ、その傘の下で平和を享受してきました。戦後の平和は日本国憲法9条があったからではなく、米国が強大な軍事力によってアジア全体の『秩序維持』に努めていたからと言ってもよいでしょう。しかし、米国が唯一の超大国でなくなりつつある今、日本は米国とバードンシェアリング(責任分担)しながら、アジアの安定化に貢献していくという新しい発想に変わるべきです。日本人は戦後教育で憲法9条があったから平和が保たれたと教えられてきましたが、現実はそれだけでなく、相当程度米国によって与えられた平和であったということを再認識しないといけないと思います」

 -国の安全保障は、エネルギー・環境問題を抜きにしては語れません

 「不安定な中東地域に原油調達の約87%を依存している現状を再認識し、日本はエネルギー自給率を高める努力と、中東安定化に貢献する外交展開の両方が求められています。現在の自給率は約9.6%で原子力発電所が動いていた東日本大震災前の約20%の半分以下に低下しています。国産の低炭素電源である再生可能エネルギーを主力電源に育成していくことは重要ですが、未だ高コストの問題をクリアする必要があります。現実的な選択として、準国産の低炭素電源である原発の再稼働を円滑化し、30年度のエネルギーミックス(電源構成)で目標とする原子力比率20~22%を早期達成するくらいでないと、突発的に何か起きたときの対応は非常にむずかしいと言わざるを得ません」

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