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新「007」に黒人女性、人魚姫アリエルも…多様化加速する映画界 (2/2ページ)

 ただ、米芸能誌「ハリウッド・リポーター」などが今月8~10日に行った調査では、ベイリーさんがアリエルを演じることについて、賛成派が55%、反対派が16%で大半が支持を表明。ただし、支持政党別では差異があり、民主党支持者の75%が賛成したのに対して共和党支持者は44%にとどまった。

 米紙ワシントン・ポストへの寄稿で、米バージニア・コモンウェルス大のブルック・ニューマン准教授は、反発が起きた背景について「トランプ米大統領が選挙で白人労働層に訴えたことと同じで、多様化する社会に取り残されたと感じている白人のノスタルジアだ」と指摘する。

 映画界で多様性を尊重する機運が高まったのは、アカデミー賞で15年と16年の2年連続で演技部門の候補者20人が全員白人だったことから「#OscarsSoWhite」(白すぎるオスカー)の抗議が広まったことがきっかけだ。

 アカデミー賞の主催者「映画芸術科学アカデミー」は、白人男性が中心だった会員構成の見直しに着手。今年推薦された842人のうち女性は50%で有色人種の割合は29%となった。

 南カリフォルニア大のアネンバーグ・コミュニケーション・ジャーナリズム学部の調査によると、昨年の興行収入の上位100作品のうち、女性が主役や準主役を演じた映画は40作品となり、17年の32作品から増加した。ただ、07~18年の計1200作品を対象に調査すると336作品(28%)にとどまっている。映画界やハリウッドに「白人男性尊重」の風潮が残っているとの批判は根強い。

 一方で、米メディアでは、PCへの配慮だけでなく、米国の人口構成の変化を受けて、映画界の非白人化が進んでいくとの見方がある。1960年に米人口の85%を占めていた白人が2040年代には全体の半数を下回ると予想されており、商業的にも、人種などの多様化が不可欠になってくるためだ。

 昨年は、黒人のヒーロー映画「ブラックパンサー」や、主要な出演者がアジア系の「クレイジー・リッチ!」が大ヒットを記録し、人種的少数派(マイノリティー)の作品であっても、商業的に成功することも証明された。

 前出のニューマン准教授は、とりわけ幼少期に接するテレビドラマや映画のキャラクターが人格形成に与える影響は大きいとして、「多様性のあるキャラクターに触れないと、特定の人種に負のイメージを持ったり、性別についてステレオタイプな考えを持ってしまう危険がある」と言及。米国の人種構成の多様化が進むことで、「幸いにも、プリンセスは白人だけという時代は終わるだろう」と指摘している。

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