主張

上場子会社の統治 支配株主の横暴許されぬ

 通販大手であるアスクルの社長解任を契機にして、「親子上場」をめぐる企業統治が問われている。経営路線で対立した筆頭株主のヤフーが、株主総会で子会社の岩田彰一郎アスクル社長の再任を業績低迷を理由に拒否し、岩田氏は退任に追い込まれた。

 今回の問題で懸念されるのは、ヤフーがアスクルの3人の独立社外取締役も再任しなかった判断だ。これによりアスクルには、東証が選任を求める独立取締役が空席となった。企業統治を機能させる上で大きな障害だ。

 株式上場する子会社の経営は、支配株主である親会社の意向に左右されやすい。だが、上場会社には親会社以外にも多くの一般株主が存在する。親会社が自らの利益を優先して子会社の企業価値を損なえば、子会社の一般株主の利益は毀損(きそん)される。

 こうした親子上場をめぐる深刻な利益相反は、仏ルノーと日産自動車の間でもみられる。政府は欧米と同様に、上場子会社の一般株主を保護する規定を早急に設ける必要がある。

 ヤフーは、アスクルが運営する個人向け通販事業の譲渡を要求した。これにアスクルが応じなかったため、総会で岩田氏の再任を拒んだ。同時に岩田氏の続投を求めた斉藤惇日本取引所グループ元最高経営責任者ら3人の独立取締役も実質的に解任した。

 東証は上場規則で上場会社に対し、利害関係のない独立取締役の選任を求めている。東証1部上場会社の中で、独立取締役がいないのは1%未満にすぎず、異常事態といえる。

 資本の論理を振りかざし、上場子会社の独立性を脅かすような支配株主の横暴は許されない。企業統治の強化を求める日本取締役協会は「支配的株主を牽制(けんせい)するための独立取締役を解任すると、企業統治の基本的な構造が成り立たない」と懸念を示している。

 経済産業省も今年6月、親子上場する企業について、上場子会社の一般株主の利益に配慮する仕組みづくりを親会社に求めた。これをさらに進め、親会社には一定の保護義務を求めるべきだ。

 日本では300社以上が親子上場しており、ヤフーを傘下に置くソフトバンクグループは昨年、携帯電話子会社も上場させた。同じ問題は今後も起きかねない。親子上場のあり方も再検討したい。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus