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スタートアップビジネスで最も重要な「当然の事」 実例で振り返る (4/4ページ)

 「数時間の開発と数日のテスト」でニーズを把握した

 彼らはこのサイトを通じ、本格的に製品作りへ進む前に、どんな人から連絡が来るのか、どれぐらいの量が来るのか検証しようと試みました。そしてサイトのローンチ当日、実際にどこかから検索して、電話でパッタイを注文する人が現れたそうです。

 彼ら自身も驚いたとのことですが、とにかくその注文を受け、タイ料理屋に行ってパッタイを注文し、それを顧客の家まで自分たちで運びました。そしてその次の日は2件、次は5件、7件と注文は増えていったそうです。DoorDashはこのようにして、注文仲介にニーズがあることを、わずか数時間の開発期間と数日間のテストで検証できました。

 最新の製品が掲載される情報サイト、Product Huntは最初、メールマガジンという形でローンチしました。顧客にまずメールマガジンに登録してもらった後に、創業者らはウェブサイトを作りました。ウェブサイトやシステムを構築するという、それなりに時間がかかる作業に取りかかったのは、顧客のニーズをきちんと理解したあとでした。

 製品を作る前に「営業」をしたビル・ゲイツ

 このようなやり方に似た例として、営業してから製品を作り始める、という手法もあります。当初、マイクロソフトのビル・ゲイツも、ハードメーカーに営業をかけ、顧客にニーズがあることを確認してからプログラムを作っています。

 そんなことができるのは、彼自身が実際に素早くプログラミングできるエンジニアだったからです。「まだできてもいないものを売る」という手法は誰にでもお勧めできる方法ではありません。ただ、確かにこれが成功すれば、「誰も買ってくれないものを作ってしまう」という時間の無駄を避けることができます。

 「最初のバージョンが恥ずかしいものでなければ、それはリリースが遅すぎだ」とビジネス特化型SNS、リンクトイン創業者であるリード・ホフマンは言っています。

 技術者は完成度や品質を上げるため、つい製品開発に長い時間をかけてしまいがちです。しかし製品開発は学校のテストと異なり、必ずしも一度のテストで100点を取らなくてもよいものです。むしろ次第に点数を上げていくような手法も通用します。

 早くリリースする、という意味では既存の製品を改造することも一つの手です。すでにリリースされている競合製品をカスタマイズして、試しに提供するところから始めてもよいでしょう。そうすることで最も貴重な資源の一つである「時間」を節約することにもつながります。

馬田 隆明(うまだ・たかあき) 「東京大学FoundX」ディレクター
 1984年生まれ。University of Torontoを卒業後、日本マイクロソフト株式会社に入社。「Microsoft Visual Studio」のプロダクトマネジャーやMicrosoftの最新技術を伝えるテクニカルエバンジェリストなどを務めた後、スタートアップの支援を行う。2016年6月より東京大学産学協創推進本部にて学生や研究者のスタートアップ支援活動に従事し、学業以外のサイドプロジェクトを行う「東京大学本郷テックガレージ」や、卒業生・現役生・研究者向けのスタートアップのインセプション(起点)プログラム「東京大学FoundX」でディレクターを務めている。近著に、『成功する起業家は「居場所」を選ぶ 最速で事業を育てる環境をデザインする方法』(日経BP社)。

 (「東京大学FoundX」ディレクター 馬田 隆明 写真=iStock.com)(PRESIDENT Online)

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