講師のホンネ

マスメディアというもの 考えさせられた1週間

 「闇営業」「反社会勢力」「パワハラ」と発展した吉本興業のことでワイドショーからお呼びがかかった。普段は、お断りしてきたけれど、好奇心から朝のワイドショーに出てみた。おとなしくしておけばよかったけれど、あまりに他のコメンテーターが吉本のことを悪く言うので、カチンときた。「お金を搾取する」と言うけれど、劇場を維持するのにどれだけのお金がかかるか。劇場があるからこそテレビの仕事がなくなっても、年を取っても芸人さんの居場所があること。

 また、タレントを売るために、どれだけマネジャーが頑張っているか。そして、マネジャーの人件費も社会保険料も必要だという現実もある。何も知らない人たちに好き勝手に言われ続けたくない。「本気で芸人を育てたことのない人間に、パワハラなんて言われたくない」と、思わず反論した。それを他のワイドショーのメンバーも見ていた。「誰なんだ、この人」。それから当社の電話は、テレビ出演の依頼や取材の申し込みで鳴りっぱなし。

 結局、平日の4日間に10本の生番組に出た。そもそも、誰も「芸人になってくれ」と、頼んでいない。自分から入ってきた世界。そして、売れたら、数年でサラリーマンの一生分、それどころか、何億、何十億というお金も稼げる世界。それを目指して入ったのなら、プロとして文句を言う前にきちんと交渉すればいい。そんな話をテレビで言い続けた。そして、ある生番組で一言。「他にもっと、取材することあるでしょ」。結果、数件のクレームと、その100倍を超える励ましの電話と激励のメール。「よく言ってくれた」「ほんま、その通り」。ありがたいけれど、届いた大量のメールに、いちばん焦ったのは、わが社のスタッフ。

 なぜなら受付メールには、講演の依頼や研修のオファーのメールも届く。何百通というメールの中から、仕事のメールを探し出すことになる。そして、もうひとつ気が付いた。わたしの仕事相手は、経営者かビジネスマン。昼間のワイドショーは見ていない。また、わたしの周囲の学生たちも当然のことながら、ワイドショーを見ていない。マスメディアというものを考えさせられた一週間となった。

【プロフィル】大谷由里子

 おおたに・ゆりこ 奈良県生まれ。1985年、吉本興業入社。横山やすしのマネジャーを務め、宮川大助・花子などのタレントを次々と売り出した「伝説の女マネジャー」として知られる。2016年3月、法政大学大学院・政策創造研究科を修了。「笑い」を用いた人材育成法は、NHKスペシャルや日本経済新聞など多くのメディアで話題に。著書は35冊を数える。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus