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「神戸ビーフ」悲願の欧米直送で巻き返し 処理施設稼働、800キロの移動解消 (1/2ページ)

 日本の和牛を代表する「神戸ビーフ」が7月、初めて産地に近い兵庫県姫路市にある処理施設から欧州に輸出された。これまで鹿児島県の施設に牛を片道約800キロメートル運ぶ必要があったが、欧米の基準に適合した施設がようやく稼働した。運営する和牛マスターの池田政隆社長は、産地からの欧米直送は「神戸ビーフに関わる全ての人の悲願だった」と話す。

 施設は2017年4月に完成したが、米国や欧州連合(EU)向けの食肉処理が認可されるまで2年以上の月日を要した。動物福祉の面で特に厳しいEUの基準に対応しているのは8月2日現在で群馬、岐阜、鹿児島各県などの7カ所。近畿地方では同社だけだ。認可により、農産品ブランドを守る地理的表示(GI)も使えるようになった。

 海外販路は不可欠

 池田社長は、神戸ビーフはブランド力があるがゆえに、以前は「神戸ビーフを食べたかったら日本に来てもらって食べるのが普通だ」という意識だったが、人口減少で国内消費が減ることを考えると、生産体制維持のためには海外にも販路を持つことが不可欠との考えを示す。今後は、2月に発効した日欧経済連携協定(EPA)も追い風に、ブランド力発揮で輸出を拡大できるかが課題となる。

 神戸ビーフは、09年に来日したオバマ前米大統領が、外交ルートで食べたいと希望したことが報じられるなど海外での知名度も高い。6月に大阪市内で行われた日中首脳の夕食会でも習近平国家主席に振る舞われた。輸出先は12年2月のマカオを皮切りに香港、米国、EU圏など現在23カ国・地域に拡大している。日本とEUのEPAでは、日本から輸出する牛肉への関税が撤廃された。

 兵庫県佐用町で牧場を経営する盛本和喜さんは、輸出の際に大きな壁にぶつかってきた生産者の一人だ。約300頭の但馬牛の繁殖から肥育までを手掛けるが、欧米向けには十数時間かけて鹿児島までトラックで運び、食肉処理してきた。牛にとっては大きな負担で、体重が10~15キロほど減った。15キロの減少は約5万円の損失に当たり、「悔しい思いをずっとしていた」と話す。

 但馬牛は兵庫県内で飼育される黒毛和牛で、一定の品質を満たすえりすぐりのものが神戸ビーフの称号を与えられる。長距離移動を余儀なくされてきたのは、輸出対応のために建設した施設の認証に時間がかかったためだ。

 和牛マスターの福水章二食肉センター長は、EUの基準は動物福祉の観念が入っており、施設内を移動させる際にたたいたり、大きな声を出したりすることも許されないため、国内向けの食肉処理とは違う動きの徹底が従業員に求められたという。

 ただ、日本総合研究所の蜂屋勝弘主任研究員は、輸出拡大には、相手国の「食品管理、認証制度に合わせた生産方法、処理ができる体制」を国内で整えていくことが不可欠と指摘する。

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