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百貨店の閉鎖、全国10店超 人口減、郊外大型店と競争激化

 百貨店の閉鎖に拍車がかかっている。人口減少や郊外の大型商業施設との競争で経営が悪化。今年の閉店は全国で10店を超える予定だ。2桁の閉店は9年ぶりで、地場百貨店で目立っている。地域の「シンボル」が消え、市街地の空洞化が進む可能性がある。

 北陸で店舗展開する大和の高岡店(富山県高岡市)は25日に閉店。1943年に開店し地域に根差してきたが、近郊に進出してきたイオンなどの大型店に客足を奪われて最近は減収が続いていた。買い物に訪れていた高岡市の主婦(72)は「生まれる前からあった町のシンボルの一つ。ただただ寂しい」とこぼす。市内に住む男子予備校生(19)も「郊外の大型店で買い物する機会が増えた。町中がにぎわっていく姿は想像できない」と話した。

 今年に入り、棒二森屋(北海道函館市)、コレット(北九州市)、大沼米沢店(山形県米沢市)といった地場百貨店が閉店。今後も大和高岡店に加え、ヤナゲン大垣本店(岐阜県大垣市)、山交百貨店(甲府市)が閉まり、伊勢丹相模原店(相模原市)など大手を含めると年内は計10店超になる見込みだ。

 2010年はリーマン・ショック後の消費低迷で西武有楽町店(東京)など10店超が閉店。今年はそれ以来の水準になる。20年も地方では天満屋広島アルパーク店(広島市)、新潟三越(新潟市)の閉店が決まっている。

 東京商工リサーチの調べでは、全国主要百貨店78社の18年の売上高合計は前年比0.1%減の5兆9865億円とほぼ横ばいだった。

 しかし、地場の独立系百貨店35社では約8割の27社が減収で、約4割の13社が赤字だった。首都圏などと比べて外国人観光客の購買需要の取り込みも難しく、日本百貨店協会の赤松憲会長(三越伊勢丹ホールディングス会長)も「大都市は堅調だが、地方では厳しい状況が続いている」と説明する。

 流通経済大の矢野裕児教授(流通論)は「インターネット通信販売の台頭もあり、地方百貨店は主力の衣料品で売り上げを落としている。独自色を出しやすい食品を強化するなど商品構成の転換が必要だ」と指摘している。

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