大家俊夫のヘルスアイ

AIで治療法提示システム実現へ 都内でデータソン、グーグルが本社挙げて参加 (1/2ページ)

 ヘルスケア分野で不可能だった治療や診断方法を可能にする武器の一つがビッグデータ解析。「GAFA」(ガーファ)の中でも、積極姿勢を見せているのがグーグルだ。東京都内で開かれた「データソン」と呼ばれる会議に専門家チームを派遣し、臨床データの解析プログラムに参加したのもその表れ。グーグルは、ビッグデータでどのような未来像を描いているのだろうか。

 ICUの現場で活用

 グーグルはこの夏、都内でクラウド関連のイベントを開催。プログラムの「データ分析と機械学習」では、クラウドによるゲノム解析なども紹介していた。ただ、一般的なデータ分析だけでは、ビジネス化まではなかなか進まない。「IT各社が喉から手が出るほど欲しいのがリアルなデータに触れる機会」(関係者)とされる。

 その格好の場がこの春のデータソン「ヘルスケアにおけるビッグデータの機械学習に関する会議」だった。ここではリアルな集中治療領域の匿名データに触れられる。京都府立医科大附属病院の橋本悟部長、東京医科歯科大の重光秀信教授らが中心となって開催した。

 この会議にグーグルは米本社から10人からなる専門家チームを派遣しただけでなく、六本木ヒルズ(東京都港区)にある日本法人本社を会場に提供、さらに機材なども用意した。協賛の立場だったが、さながらグーグル主催のような様相となった。

 データ活用をチームで競うデータソンは、医療分野では米マサチューセッツ工科大学(MIT)の医師らが先駆けとされ、世界各地で開催されている。

 グーグルが東京のデータソンに関わるきっかけは重光氏にあった。数年前に北京で開催された会議でグーグル本社のスタッフが重光氏と出会い、昨年シンガポールでの会議で再会。重光氏から「日本でデータソンを開催するから来ないか」と誘われたという。

 今回のデータソンにはMIT、国立シンガポール大学、オーストラリア・ニュージーランド集中治療学会の研究者らが、日本からは医師やシステムエンジニア(SE)、データサイエンティストらが参加。グーグルのスタッフもグループに分かれて、集中治療領域の匿名データを基に、最適な治療方法を見いだすモデルの開発を競った。

 ここで解析した中身は公表されていないが、人工知能(AI)でビッグデータを解析すれば、集中治療はどのように変わる可能性があるのか。

 重光氏は「手探りの治療からデータに基づく確実な治療への変革」と指摘する。

 その一つに、集中治療室(ICU)に搬送されてくる急性期の患者で血圧が急激に下がる場合、現状では医師がその時のバイタルデータ(脈拍、血圧など)や検査データとこれまでの経験によって治療方法を判断している。だが、同じような症例、同じような年齢の患者の大量のデータをAIに学習させれば、医師に最適な治療方法を提示できるようになる。

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