遊技産業の視点 Weekly View

ラオス経済特区のカジノ事情

 ラオスは、ASEAN諸国の中では唯一の内陸国であり、国土面積は東側に隣接するベトナムの70%ほどを有するが、人口はベトナムの約8%、700万人ほどしかいない。国全体が山岳国で、山岳面積は国土の70%を超え、居住地域が限られるからだ。また、首都ビエンチャンこそベトナムのようにバイクや車が増え、社会主義的な都市開発が局所的に見られるものの、地方都市はまだまだ牧歌的な山岳農村地域ばかりだ。(シークエンス取締役 LOGOSインテリジェンスフェロー・木村和史)

 そんなラオスにもカジノは存在する。ラオスでは全ての賭博行為が禁止されており、国境地帯の経済特区内に限り、カジノは認められている。

 現在、ラオス国内では1996年に首都のビエンチャンで開業した国内資本のダンサヴァン・ナムグムリゾート、2007年にゴールデントライアングル特区(ラオス、タイ、ミャンマーの3国国境)で華僑系資本が開業したキングス・ロマン・カジノ、2009年に中部のタイ国境のサワンナケート県で開業したマカオ資本のサヴァン・ベガスホテル・カジノの、いずれもIR型3施設がある。なお、カジノに入場できるのは21歳以上の外国人だけでパスポートの提示が求められるが、入場は無料でドレスコードもカジュアルでOKだ。

 もともと、これらカジノ以外でも、2000年前半に中国(雲南省)国境のボーテン(ルアンナムター県)にラオス政府は特区を設け、華僑企業に土地を貸与し、カジノタウンが建設された。街には中国人観光客が押し寄せにぎわったが、急速に治安が悪化し、刑事事件も起こったことから中国政府が渡航を制限するなどし、最終的に2011年にカジノは閉鎖された。このことが反面教師となっているかは定かではないが、同カジノ閉鎖後、政府としては新たなカジノを開業させていない。

 ラオスの場合、特区はいずれも国境沿いになるのだが、国境沿いは山岳少数民族の居住地であることが多く、特区で開発が進むことで、そこに住む少数民族が立ち退きを余儀なくされたり、彼らの古(いにしえ)から培ってきた生活を一変させたりしてしまう。政府として、こういったことが念頭にあるのかは別として、いずれにせよ、やみくもにインバウンド目当てに外貨を獲得しようとする様子はうかがえない現状だ。

【プロフィル】木村和史

 きむら・かずし 1970年生まれ。同志社大経済学部卒。大手シンクタンク勤務時代に遊技業界の調査やコンサルティング、書籍編集に携わる。現在は独立し、雑誌「シークエンス」の取締役を務める傍ら、アジア情勢のレポート執筆など手掛ける。

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