話題・その他

消費税10% 中小は価格転嫁できぬ恐れ 肩代わりなら経営へ打撃

 消費税が10%に引き上げられるのを前に、中小や零細企業の経営者の不安が消えない。取引先である大手企業からの圧力で、増税分を販売価格に反映できない恐れがあるためだ。「転嫁はできないだろう」。増税分を肩代わりさせられれば経営への打撃は大きく、悲観的な見方が広がる。

 「『もっと安く』と言われ、応じられなければ他の業者に仕事を取られてしまう。価格の決定権はない」。埼玉県川越市で製本会社を経営する男性(52)は、厳しい表情を浮かべた。

 約60年続く同社は、企業のパンフレットや自治体の広報誌などの製本を請け負ってきた。消費税導入以降、過去の増税では製本用の資材や、機械のメンテナンスの費用が増えた一方で、価格には反映させてもらえなかった。男性は「その積み重ねが今になってボディーブローのように経営に響いている」と話す。

 中小企業庁や公正取引委員会は、元請けによる価格転嫁拒否を取り締まっているが、男性は「元請けも、ばかじゃない。消費税が上がった分、本体価格を抑えさせて実質的に転嫁させないケースが多いのでは」と打ち明ける。日本商工会議所が5、6月、約3000社に実施した調査でも、約3割が増税後の見通しを「一部、または全てを転嫁できない」と答えた。

 2011年3月の東日本大震災で被災した宮城県石巻市。水産加工会社を経営する60代の男性は、津波で全壊した工場を復旧させ、販路を再び開拓中で「2%分は身銭を切ることになるだろう」とつぶやく。

 材料となる魚の仕入れには軽減税率が適用され8%のままだが、商品をパックする資材や運送にかかる費用は増税でかさみ、全体のコストは膨らむ見込みだ。納入先の大手スーパーは同業他社との価格競争が厳しく、男性は「値上げなんて、とてもできない。商品を使ってもらうために、転嫁は諦めるしかない」と話している。

Recommend

Ranking

アクセスランキング

Biz Plus