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なぜデンマークは、消費税が25%でも軽減税率を導入しないのか (5/6ページ)

 「C効率性」の高い日本

 消費税や付加価値税(消費税とほぼ同じ仕組み)の効率を測る際に、C効率性という指標がある。本来得られる消費税のうち、実際にどれだけ税収として計上されているか? という指標だ。これは軽減税率の対象が広いほど、そして軽減税率が低いほど効率が悪化、つまり税収が減る。あらゆる取引に例外なく消費税が適用されて、軽減税率もなければ数字は100%となる。この状況に最も近い国は消費税が15%のニュージーランドだ。

 日本は軽減税率がなく、多くの取引に消費税が課されているため欧州各国と比べてC効率性は比較的高かった。身近な所で消費税のかからない取引は、賃貸で住居を借りるケースだ(法人が借りる場合や、個人でも購入する場合は課税される)。

 しかし今後軽減税率が適用されればC効率性は下がる。8%と10%程度の差ならば大きな影響はないが、消費税は15%まで上がったけど食品は8%のまま、といった状況になればEUと同じように効率は大きく悪化する。

 現在は消費税1%あたり2兆円といわれている税収も、軽減税率が強化されるほど低下していく。そして軽減税率のバカらしさを多くの人が理解して反対しない限り、そうなる可能性は極めて高い。シンクタンクの報告書でも以下のように書かれている。

  •  諸外国の経験からは、国民に一旦軽減税率というアメを与えると、それを厳しい方向にもっていくことが政治的に困難であることがわかっており、日本も今後欧州諸国のように課税ベースが縮小していく可能性がある。とりわけ、今回の消費税の軽減税率導入を巡るてん末は、消費税のC効率性がその時々の政治情勢の影響を強く受けて推移することを示唆するものである。
  • 消費税の軽減税率とC効率性 みずほインサイト みずほ総合研究所 2016/03/16

 欧州各国は、標準税率と軽減税率の差が非常に大きいためC効率性が低く、税収を確保するには消費税を過剰に引き上げなければならない。そしてみずほ総研の資料では「再分配機能は個人の事情を斟酌(しんしゃく)することができる個人所得税に譲り、消費税はできるだけ効率的に税収を確保することが求められる」とある。

 つまりデンマークのように軽減税率は導入せず消費税は一律に、低所得者対策は所得をベースに社会保障給付の形で行う……。繰り返しになるが、このように「課税」と「増税対策」は切り分けることが合理的で、消費税の範囲内だけでつじつまを合わせるように増税対策を行うべきではない、ということになる。

 ※C効率性に関してかなり簡略化して説明した。詳細は引用した資料等を参考にされたい。

 キャッシュレス決済によるポイント還元も金持ち優遇策

 先日、消費増税を前に、過去の増税時に比べて駆け込み消費があまり発生していないと報じられた。これは軽減税率に加え、ポイント還元がキャッシュレス決済に限り、大企業では2%、中小企業では5%と増税分以上に行われる事が理由で、増税後に買い物をした方がかえって有利なケースもあるという状況による。

 過去に消費税を導入した、あるいは導入しようとした政権はほとんど例外なく選挙で負けている。二度も延期した上でここまで過剰な対策を打たないといけないほど、日本の政治家にとって消費税はトラウマということなのだろう。

 各種の施策は増税による駆け込み消費とその反動への対策だが、長い目で見れば駆け込みとその反動が同じ振れ幅であれば、行って来いでプラスマイナスゼロだ。それを平準化することにあまり意味はない。それよりポイント還元もまた「消費額に結び付いていること」で間違った仕組みになっている。

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